成功ってなんだろう
ブランドを立ち上げてまだ1年経っていない頃だったと思う。まだコロナ禍真っ只中で、皆マスクをつけて外出していた。
いわゆる“エリートサラリーマン”の女友達とご飯を食べていた時のこと。彼女は大手金融機関でバリバリ働いていて、社会的にも経済的にも成功していた。
あるいは「成功しているように見えていた」という方が正確だったのかもしれない。彼女は彼女の在り方に、それなりに不満を抱いていたようだ。ことあるごとに「独立したい」という主旨の発言を繰り返していたことからもそれが読み取れた。
私が彼女に、
「いつかきちんと『成功した』っていえるようになりたいな」
とこぼした時、彼女は私に、
「もう十分成功しているじゃん」
と返答した。
私はとても驚いた。まだ自身にきちんと給与すら払えていなかったし、ブランドも今以上に小さく無名中の無名(今は「知る人ぞ知る」くらいになれていると、いいなぁ…)だったので、彼女の言葉を真剣なものとして受け止めることができなかった。
もちろん、彼女は真面目にその言葉を発していた。彼女が私のどの部分に「成功」を見出していたのかはよくわからないが、きっと、自分の願望を実現したことや、ブランドを一応ローンチしたこと、もしくはとりあえず取扱店が複数ある状態、あるいはそれらをひっくるめて、「成功」だと評価したのだろう。
私自身は、私の状況の評価として「成功」が適切なものだとは考えていなかったし、そこから3年ほど経った今もその状況はさして変わっていない。客観的な評価としての「成功」からは程遠いというのが現状だろう。
それはそれとして、私自身の「成功」とはどういう状況を指すのだろうか、と最近考えることが多くなった。
そのきっかけは、ここ数ヶ月での私を取り巻く環境の変化だろう。アシスタントが辞めたことでほぼひとりでブランド運営をしなければならなくなったり、自転車を買って週末ごとにロングライドを楽しむようになったり、と、ポジティブなこと、ネガティブなこと、さまざまあった。それが思いがけず改めて自分が何をしたいかについて考える契機となったのだ。
ここ最近のnoteでも書いている通り、ブランドが大きくなることや有名になること、あるいは私がお金持ちになることなんかはそれに寄与しないことを今私は薄々感じている。ブランドとしては私が思う「いい香り」を作り続けること、そしてそれをきちんと伝えること、このふたつだけが現時点においてやりたいことだ。これらができて、その上でブランドの運営に困らない程度にお金が入ってくれば、仮にそれが周りから評価されなくとも私にとっては十分に「成功」なのだろう。逆にいうと、ブランドが有名になってしまったことで、不本意ながら“売れ筋”を狙って香りを作り出したら、もし私が経済的に“成功”したとしても、私自身にとっては「成功」とは呼べないはずだ。
結局のところ、私個人としては幸せになることこそが「成功」なのだと思う。幸せの形は思いの外人それぞれで、それもあってか私は今まで自身の幸せの形について自覚的ではなかった。だからブランドを大きくしたいという漠然とした気持ちのどこかに違和感を抱き続けていたのだと思う。それは「そうあるべきもの」だとばかり思っていたが、もし私自身が幸せになることのみを希求するのであれば、全くもって無視できることなのだ。
私がもっと「成功」するためには、どういうことが必要なのだろうか。
それはきっと、今以上に自由になることなのだと思う。時間にも場所にも縛られず、軽やかに生きていくことが、私が求めていることなのだと感じる。
それを実現するために今何をすればいいのかはよくわかっていないが、あるいはこのnoteこそが、そのための鍵なのかもしれない。「幸せとは何か」という問いを自分に投げかけ続け、その時点での仮の回答をこのような形で文字にすることで、私はそれに一歩ずつ近づいていけるような気がしている。
いずれにしても、今は今までの人生で一番自由で、かつ一番幸せな状態であるように感じている。明日はもっと自由で、もっと幸せになれたら、それは小さな「成功」だ。そして、時として谷はあったとしても概ね登り続けていけば、きっとそれこそが本当の意味での「成功」になるのだろう。
そんなふうに考えている、今日この頃なのです。
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