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だから移動はやめられない

çanomaを立ち上げて4年ちょっとの間、ありとあらゆるセレクトショップを訪問した。東京に限らず、日本国内津々浦々巡ったし、ヨーロッパ諸国やニューヨークにも足を伸ばした。ただ訪問するだけに限らず、お店の人ともよく話したし、身銭を切って買い物もした。本当に、よく買い物をした4年間だった。

その中で学んだことはたくさんある。ピカピカのブランドラインナップだからといっていいお店になるわけではないこと、地域や客層に合わせて「いいお店」のあり方は大きく変わること、バイイングの仕方によって同じブランドでも店ごとで全く違った見え方になること、「縦積み」か「横積み」かという思想の違いがあること、などなど…この仕事をしていなかったら、知らずに死んでいったであろうようなことばかりだ(注:「縦積み」とは、ひとつのブランドの中で同一商品を多数注文するバイイングのことを指す。反対に「横積み」はひとつのブランドの中で多数の商品を少量ずつバイイングすることを意味する。当然、どちらがいい、というものではない。それぞれにメリットもデメリットもある)。

そして、これだけインターネットによって簡単に情報が手に入るようになった今日においても、オンライン上だけで見えるお店の姿からはわからないことがたくさんあることに驚かされる。実際に足を運んで、お店の人と会話をして、お金を使って、ということを通してはじめてお店は真の姿を見せるのだ。

だから私はこれからも、çanomaの取り扱いを検討してくれるお店や私自身が気になっているところには、どこであっても赴いて、実際に自分の身体とお金を使ってそこがどんなお店であるかを知ることに努めていく所存だ。それは私の中で、とても大切な仕事なのだ。大切な自分の商品なのだから、それくらいするのが当然だと、私は考えている。


そうやってあちこち回っている中で、最近セレクトショップの方から聞いた、気になる話がふたつあった。


ひとつは、とある東京のお店で聞いた話。東京のお店に来るお客さんは、地方に比べて、気になっている商品があらかじめあり、それのみを目掛けてくる傾向が強いらしい。そういうお客さんは、その商品だけを見て、すぐに購買するか、しない場合は他の商品には目もくれずに退散することが多いとのことだった。

そのセレクトショップの方は、本当だったら、例えばシャツを探しているお客さんに対しては、そのお店のシャツのラインナップの中から提案する、ということがセレクトショップとしてのあるべき姿だと考えていた。お客さんにもそういう形で買い物を楽しんで欲しいし、そうでないとオンラインでも購入できるもののサイズや質感等を確認するための“ショールーム”に成り下がってしまう、という主旨のようだった。

地方は東京に比べると、お客さんが“ふらっと”立ち寄って、なんとなくお店を見ていく中で気に入ったものを買うという流れがより起きているらしい。これは、東京の方がお客さんとお店のつながりが希薄になっていることの表れなのかもしれない、とふと思ったが実際はどうなのだろう。


もうひとつは、とある地方のお店で聞いた話。最近のセレクトショップは、昔以上にブランドラインナップでの集客を狙っているらしい。人気のブランドを扱っていさえすれば、バイイングやお店の内装、接客がどうであれ、とりあえずお客さんは来るようだ。それによっていいお店でなくても繁盛しているところが結構ある、とのことだった。

また、とりあえず人気のブランドを扱っていると、自然とブランドの方からお店に取り扱いのお願いの連絡がくるらしい。ブランドの営業がお店のブランドラインナップを見て連絡をしている証拠だろう。

この背景には、想像するにブランドがわざわざお店を見に行かない、ということがある。もしブランドが取り扱いを開始する前に店舗を下見したら、取り扱い許可の判断材料に、接客や内装等も入ってくるはずで、それによってどんなにブランドラインナップがピカピカでも、いい店でない、と判断されてしまったら取り扱いを許可することはないだろう。実際、地方に行くと、お店は全くといっていいほど“イケテナイ”のに、ブランドラインナップだけやたらといいところが結構な数ある。


いずれにしても、唯一の正しいやり方があるわけでもないし、「いいお店」のあり方も多種多様だ。ただ、お店、ブランド、そしてお客さんが、インターネットという“体のいいツール”の使い方に聡くなりすぎたが故に、「足で稼ぐ」ということをしなくなってしまった、ということは事実としてあり、それによって失われつつある様々なことが、お店を、ブランドを、そして消費を、場合によっては悪い方向に導きつつあるのではないか、ということを、私はぼんやりと思うのであった。

効率が悪くても、何も得るものがないかもしれないくても、とにかくあちこち動き回ろう、と気持ちを新たにした次第。


そんな私は今松山にいる。思っていた以上に有意義な出張となった。

だから移動はやめられない。


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