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酒を飲む夢

3日後の今頃、私は日本に戻るフライトの中のはず。何も問題がなければ、だが。


2週間ほどのパリの滞在は“あっという間”といえるほどは短くはなく、かといって「早く日本に戻りたい」と思うほどには長くない。ただ、それでは「ちょうどいい」のか、と問われると、それも何だか違うような気がする。

パリで過ごす時間を「旅行」や「出張」と捉えるには私はパリを知り過ぎている。6年住んだこの街から離れてもうすぐ3年になるので、私は今“どっちつかず”の状態なのだろう。「住んでる」とも「滞在している」とも違い、それに適切な言葉をあてがうことができないことからくる“もどかしさ”がそこにはある。別れたはずの恋人と、ダラダラと会い続けては惰性でセックスを繰り返すような、そんな感じなのかもしれない。

違う、か…


今日は朝早い時間から仕事があり、ランチには少し遅い時間に家に帰ってきた。簡単に昼食を済ませ、いくつかの作業をした後、どうしても睡魔に勝てなくなってしまった私は布団に潜ることにした。明るいうちにあれこれやりたいこともあったので、スマートフォンのアラームを20分にセットした。

何時ごろ寝たのかはよく覚えていない。4時ごろだったような気がする。目が覚めたのは夜7時だった。外は暗くなり始めていた。スマートフォンの画面上に目覚ましを止めた形跡はなく(いつも不思議なのだが、私は寝ながら勝手に目覚ましを消しているのだろうか…?)、いくつかの仕事の連絡と、複数の友人からのメッセージが踊っていた。

私はまたやってしまったようだ。ぼんやりとした頭のまま、YouTubeでクイズ動画をいくつか観て、やおらnoteを書き出してみたが、今日はまったく筆が進まない。ちゃんと書き上げられるのだろうか。


それにしても、“重さ”を伴った睡眠だったように感じた。泥の中に引きずり込まれるような感覚で私は入眠した。その力に私は、どうにもこうにも抗えなかった。


長い夢を見ていたが、覚えているのはその結末部分だけだ。オーセンティックなバーにとある男性(知っている人のような気がするが自信がない。きちんとしたスーツを着た中年男性だった)と横並びで腰掛けている。ロックのウィスキーが入ったグラスが私たちの前にそれぞれ差し出される。もう長いことアルコールは1滴も口にしていないが、その男性がそれを一息で飲み干したのにつられ、私も頭を上に向けてその琥珀色の液体を喉に流し込む。ほんの一瞬だけ、もうほとんど忘れていた酔いの喜びが蘇るが、それは蜃気楼のようにすぐに消え、目が回ってしまった私は腰掛けていた高めのスツールからひっくり返って落ちてしまうのだ。


どうやら私はとても疲れていたようだ。その疲れは日本から携えてきたものなのか、移動や時差に伴って生まれたものなのか、あるいはパリの滞在によって引き起こされたものなのかはよくわからない。もしかしたらその全部かもしれない。


新宿伊勢丹「サロンドパルファン」の開幕まで2週間となった。そこからは3つの地方都市での「サロンドパルファン」、いくつかの出張、個店でのポップアップ、などなど…が12月まで続く。ここからの3ヶ月はノンストップの予定だ。

こんなに疲れた状態で日本に帰って、その3ヶ月をちゃんと走り切ることができるのだろうか。私は元来、リフレッシュするのがとても苦手だから、この残された3日間でパリに私の疲れを“置いてけぼり”にはできないだろうが、その中のいくつかの重そうなものは取り除けるといいな、と思う。

あるいは、お酒をやめたことが疲れを背負ってばかりのひとつの原因であることを、あの夢は暗示していたのだろうか。もうかれこれ5年近く飲んでいないことになるが、今こそお酒を解禁するべきなのだろうか。

いや、夢でもそうだったように、刹那楽になるかもしれないが、直後に転落が待っているはず。それに、もはや「酔う」という感覚を忘れてしまったので、酔っ払うのが怖くて怖くて仕方がない。この仕事をしている限りは、お酒は飲まないでおこう。


ダラダラと書いていたらもう夜10時を回ってしまった。これから夕飯を作らなければ。

残りのパリ、新鮮な気持ちでリフレッシュできるといいな。


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