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悪の問題
次の4つの主張について考えてほしい。
・神は全能である(神の力でできない事は無い)
・神は全治である。
・神は完全な善である。
・この世に悪が存在する。
昔から有神論者、神の存在を信じる人は、この4つの主張を受け入れてきたが、多くの哲学者は、この4つは矛盾していると主張している。
もし神が全能なら、神は悪のない世界を作ることができたはずだ。
また、悪の無い世界の方が悪のある世界よりも善なのに、完全な善である神が悪の存在する世界を意図的に想像したのは、一体どういうことなのだろうか?
これに対する答えの一つは「この世に悪が存在するのは神の責任ではない」というものだ。
この考えを支持する人は、神は世界を創造したが、悪は人間が作り出したと主張する。
人間は自由意志を持っており、神が悪を防ぐには、人間に自由意志を与えるのをやめるほかない。
しかし、人間が自由意志を持たない世界は、現実の世界よりもはるかに悪い。
ゆえに神は最善の選択をして、自由意志をもった人間を創造し、その結果、悪が存在することになったというのである。
もちろん、この説で自然の悪、ハリケーン、地震、津波など死と苦しみをもたらす天災の問題が解決されるわけではない。
神は自然世界を、何の落ち度もない人々の命を奪う災害が現実よりも少ないものとして創造することができたはずだ。
では、なぜそのような世界を創造しなかったのか?
この問題に、「ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646~1716)」は、有名な【この世界は存在しうるあらゆる世界の中で最善の世界だ】
という主張で答えた。
確かにこの世界には、悪い特徴がいくつもある。
例えば、多数の犠牲者を出す大型ハリケーンがそうだ。
しかし、大型ハリケーンの無い世界は、この世界よりも悪いと、ライプニッツは主張する。
そうした世界には、例えば、天気の変化を支配する見事な自然法則が存在しないからだ。