なぜカミナシは「出社を前提としないワークスタイル」を選択したのか
こんにちは!カミナシでCOOをしている河内です。
新型コロナウイルス拡大によるはじめての緊急事態宣言から、1年半が経過しました。
あらゆる企業が新しい働き方を模索してきた期間だったと思います。徐々にワークスタイルも「コロナ禍」の暫定対応から、「コロナ後」も含めた新しい働き方を意思決定するフェーズに変わってきたように感じます。
カミナシでも議論の末、リモートワークに関する働き方のポリシーを定めたので、その内容や背景について本記事で公開していきたいと思います。
コロナ前はどんな働き方だったか
コロナ前までのカミナシは原則出社して対面でコミュニケーションをとることを重視したカルチャーでした。
・リモートワークだと熱量が失われる
・対面の方がコミュニケーションの効率性が高い
と「なんとなく」感じていたという理由です。
そんな中、緊急事態宣言を境にフルリモートワークが始まります。
事業をピボットした直後で残キャッシュも僅かなタイミングでした。
(ピボットの詳細は以下noteで書いてます)
タイムリミットが迫る中、「コロナ禍」という言い訳をする余裕もありません。どうすればリモートワークで成果を出せるかを必死で試行錯誤しました。
その結果、緊急事態宣言から3ヶ月後にはプロダクトを正式リリースすることができ、その後IVS Launchpadで優勝、シリーズAで11億円の資金調達など、少しずつ事業が軌道に乗ってきました。
そして、本格的にリモートワークに取り組み始めてから1年が経過し、社員数も約3倍の30名弱になったタイミングで、会社として正式な働き方のポリシーを考えていくことになりました。
なぜ、いまポリシーを変えるのか
テックジャイアントのGAFAや、国内スタートアップ企業でもリモートワークに関するポリシーは千差万別で、働き方に対する価値基準は人によって様々で正解がないのが現状です。
ネットを見ても、まるで「きのこの山」vs「たけのこの里」論争のように答えが出る気配はありません。
このように価値観が多様な「働き方」を現状から変える意思決定は、カミナシのように小さな組織でもハードルが高いです。
実際に社内でコロナ後も含めた働き方のアンケートをとったところ、以下のように希望もバラバラでした。(さすがにフル出社を希望する人は0人でした)
意見が割れる中、「コロナ禍の暫定対応」という形を取り続けることは簡単ですが、スタートアップにとって優秀な人材を確保し続けることは死活問題です。
この1年半でフルリモートワークの働き方も当たり前になり、地方・郊外に引っ越す人も増える中、社会全体が従来の出社を前提にした価値観に戻るとは思えません。
実際にカミナシにもコロナ禍で都心から郊外に引っ越した社員がいたり、育児中の社員が増えて柔軟な働き方のニーズも高まってきました。
このような状況を踏まえると、働き方も社会全体の流れと整合をとっていくことが、採用力や社員の働く満足度に繋がり、会社の競争力に繋がるのではと考えました。
一方で働きやすい環境を作って事業が伸びなくなったら本末転倒です。当然ですが、スタートアップは目の前の事業成長を失速させる訳にはいきません。短期的には生産性が高く、長期的には競争力のある選択である必要があります。
そういった前提の中、1年半働き方を試行錯誤したカミナシが出した結論は、コロナ前のように出社を前提とした組織運営はしないという意思決定でした。
カミナシの新たな働き方ポリシー
何度も議論を重ね、全社員にアンケートをとったり、各メンバーに個別ヒアリングをして検討を進めました。
その検討プロセスも色々と失敗を重ねながらも、試行錯誤してきました。
(詳しくは以下noteで触れているのでご覧ください)
先に結論からお伝えすると、カミナシの働き方ポリシーはこのようになりました。
・会社としてはリモートワーク/出社ともに強制しない
・月1回は出社DAYを設けて、その日だけは全社員が出社する
・チームごとにその時々で最適な運用ポリシーを決める
・細かいルールはあえて定めず、自身の判断で最適な働き方を選択する
・出社している人も、リモートワークの人に合わせて働く
その背景について、書いていきます。
個人・チームの判断で最適な選択を決定する
メンバーにヒアリングをしたところ、チームの業務特性・その日の仕事内容によっても、リモートワークをすべきか・したいかの判断が分かれることが分かってきました。その時々や環境によって「意味のある」週5出社と「意味のない」週1出社が存在し得ます。
そのため、全社の働き方ポリシーの目的に沿う形で、各チームのローカルポリシーを定め、そのポリシーも都度定期的に見直しながら運用することにしました。
▼チームごとのポリシー例
・エンジニアチーム
基本はリモートワークとしつつ「対面で設計のブレストしたい」という話になれば出社
・セールスチーム
週1回は任意出社日を設け、3ヶ月に1度オフサイトミーティングを開催する
カミナシでは個々人が裁量を持ち、自律的に判断をするというカルチャーを大切にしています。
「1週間北海道にいってワーケーションしてきていいですか?」
という問いに対して、
「ルール上、許可されているからOK or されていないからNGです」
というよりは、
「その時の業務内容的に、パフォーマンスに支障がないならOK or 支障があるならNGです」
という方が本質的ですし、会社としてリモート/出社を強制したり、細かいルールを作るよりは、自身の裁量と責任で最適なワークスタイルを決定できる「余白」のある形がカミナシらしいのではないかと考えました。
一方、リモート・出社がハイブリッドになる中で、どちらかが働き辛さを感じないように会社としてガイドする必要もあります。会議体などは出社しているメンバーがリモートワーク中のメンバーに合わせて働くことを基本的なルールとしています。
完全なフルリモートOKにしなかった理由
今回のポリシーでは、全社の出社DAYを月に1回設けているため、出社0回の完全なフルリモートワークは想定していません。
組織の問題のほとんどは突き詰めていくと、コミュニケーションの問題に帰結します。オンライン完結でコミュニケーションを工夫して、うまく組織運営をされている企業が存在すると思いますが、難易度が高いのも事実です。
特にカミナシのように、
・毎月新規入社者が発生してオンボーディングが必要
・異なる専門性を持つ機能別の組織が多く存在する
という環境では、さらに難易度が上がり、話せばすぐ解決する小さな問題のすれ違いが大きな問題に発展することもあります。
そのため、月1回はコミュニケーション・チームビルディングの日と位置付けて全社員が集まり、
・アイデア出しのブレスト会
・バリュー浸透などのワークショップ
・シャッフルランチ
など、対面で行う価値のあるイベントを毎月1回全社で開催するようにしました。
組織的負債を溜めないコミュニケーションの場作り
プロダクト開発では「技術的負債」という言葉を使って過去の技術的な問題の蓄積を表現することがありますが、組織にも「組織的負債」が存在します。
コミュニケーションへの時間投資は、一見非合理に見えることもあります。
例えば月1回の出社DAYだけではなく、カミナシでは毎日10分弱オンラインで朝会を行なっており、そのうち5分はランダムで数人にZoomの部屋を分けて雑談をする時間を設けるようにしています。
通常業務が忙しい中、「やる意味あるの?」と思う人もいるかもしれません。しかし、組織的負債は目には見えづらいですが、コミュニケーションの不足をきっかけに少しずつ組織を蝕んでいきます。
これまで無意識的に発生していたコミュニケーションの機会をオンラインでも再現性のある形で作るには、経営が意思を持って場作りを行なっていくしかありません。
特に、リモートワークが中心になると新規入社者や異なるチーム同士のコミュニケーションの機会はほとんどなくなるため、意識的に場を作るようにしています。
月1出社を採用観点で考える
リモートワークの頻度によって、採用できる候補者の居住エリアに違いが出てきます。
個人の価値観によって幅はありますが、こんなイメージです。
特に最近では、地方在住の優秀なエンジニアの方にお会いすることが多いのですが、候補者の方に話を聞くと、地方から東京の通勤でも月1回であれば出社できる(むしろしたい)という方がほとんどでした。
もちろん海外にも優秀な方はたくさんいるので、フルリモートにすることで採用できる層に更に広げるという選択肢もあったのですが、今回は採用の裾野を日本全国に広げることと、前述したようにコミュニケーションやチームビルディングの場作りを両立することを考え、月1出社を選択しました。
カミナシにとってのオフィスが持つ価値
カミナシの働き方のポリシーは、このような形になりました。
結果的に細かいルールは作りこみすぎず、個人がミッション・バリューに沿って自律的に考え、判断する余白を残した運用になっています。
実はこのような方針になってから、起きた面白い変化があります。
それは、これまで以上に全社員がオフィスに出社する価値を自ら考え、工夫することで、これまで以上に出社するメンバーが増えたことです。
コーポレートチームは「出社したくなるオフィスにしよう」とオフィスコンビニの設置や、オフィスカミングデーなど様々な施策を考えてくれたり、他チームもチームビルディングを目的としたオフサイトミーティングを定期開催するようになりました。
同じ回数出社するにしても「会社のルールで出社する」のと「出社することを自分で選択する」では、不思議と意味合いが変わってくるように思います。
このような現状を見ると、カミナシにとってのオフィスは「ワークスペース」としての機能以上に、定期的に集って価値観を共有したり、より良い仕事生活を過ごすための人間関係を構築するための機能として存在していくのだろうと感じています。
こちらの記事に共感したのですが、オフィスは「教会」や「アイデンティティを再確認する場」という位置付けが今のところしっくりきています。
これからのオフィスは“教会”のような機能になるはず。教会は、同じ空間に教徒を集めることにより、「私たちはこれを大切にしていこう」とみるべき方向を再確認してもらう役割があります。
JINSもそう。約400名いる店長たちは、顔を合わせる機会があまりありません。しかし、四半期に一回の店長会議で、ビジョンやミッションを確認し、同じ方向に向き直す儀式をしているのです。
オンラインで完結するこの時代。せっかくひとつの法人に集まって、同じ旗を掲げるのなら、オフィスに教会のような機能をつけることで、リアルの場の価値が高まっていくのではないでしょうか。
今回は、以上です。
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