カミナシの「最初の100人」、SaaSスタートアップの組織はどう拡大するか
SaaSスタートアップは最初の100人にどんな人材を採用すべきでしょうか。
こんにちは、カミナシでCOOをしている河内です。
早いものでカミナシに入社して、3年半が経ちました。入社当時は9人目社員でしたが、現在では正社員で100人規模となり、これまでの組織拡大について尋ねられることも増えました。
私自身も先輩スタートアップから聞いた話を参考にさせていただくことも多かったため、本記事ではカミナシでの100人までの組織の変遷をフェーズごとに振り返るとともに、いま見えてきた組織課題についても書いていきます。
組織変遷の振り返り
ここからは、SaaSスタートアップの組織拡大を追体験してもらえるように社員数10→100人に至るまでを時系列で振り返っていきます。
社員数 10人
以前のプロダクトをピボット後に現在のプロダクトのβ版をリリースした時期です。残キャッシュが残り1年を切っており、全社員がプロダクトマーケットフィットに向けてフォーカスしていました。
多くの役割兼務によって、組織が成り立っています。
バックオフィスは専任がおらず、CEOが給与振り込みを行なっていました。新規採用はストップしており、採用ページも存在していません。
社員数 25人
ピボット後のプロダクトが順調に伸び、シリーズAで約11億円の資金調達ができました。その資金を元に体制づくりを行なっています。
顧客数は順調に成長していましたが、まずはグロースよりも初期顧客のサクセスを優先するためにカスタマーサクセス、サポートの体制に力を入れて増強しています。
青アイコンが純増した人数です。
10-25名のタイミングで1人目のHRとPRが入社し、コーポレート専任メンバーの加入でバックオフィスが一気に近代化しました。
また、セールスチーム内でSMB/Mid-MarketとEnterpriseで企業規模別に担当を分けたり、カスタマーサクセスチーム内でオンボーディングとリテンションの担当を分けたりと少しずつチーム内で機能の分化がはじまっています。
社員数 50人
再現性を持ってプロダクトの価値を届けられるようになったため、グロースに向けてビジネスサイドを一気に拡大させました。
本来もっと早く採用をしたかったのですが、このタイミングで1人目のマーケターが入社しています。
リーダー不在のエンジニア組織では採用に苦戦し、開発組織の課題も顕在化しはじめていました。そんなタイミングで、50人目前後でついに待ちわびたCTOが入社し、技術的負債の返済やスピードが落ちていたプロダクト開発の改善に向けた動きがどんどん進むようになります。
社員数 75人
シリーズBで約30億円の資金調達を実施し、新規プロダクトの開発に着手しはじめました。
CTOやエンジニア採用担当の入社とあわせて、苦戦していたエンジニア採用に全社で注力し、エンジニア組織が一気に倍近くまで拡大しています。
カミナシのプロダクトは小規模に導入いただいた後、全工場・店舗に拡げていただくことも多く、ARRを拡大するためにはお客様に満足いただくためのカスタマーサクセスとアップセルを推進する体制が重要です。
過去にはセールスやカスタマーサクセスの担当が、各々のタイミングでアップセルの提案を行なっていましたが、安定しませんでした。そこで、戦略的にアップセルを推進して顧客への提供価値を拡げるためカスタマーセールスという役割を作りました。
また、セールスが兼務していた金融機関をはじめとするパートナーとの協業経由での案件紹介も増え始めていたため、パートナーセールスの専任を配置して取り組みを加速させました。
社員数 100人
いよいよ現在の100人規模です。
採用が順調に進み、いつの間にかエンジニア組織が全部門の中で最も人数が多い組織になりました。PMやデザイナーも増え、プロダクトカンパニーとしてのモメンタムも出てきました。
「セールスからカスタマーセールス」、「インサイドセールスからマーケティング」など社内異動も増えはじめました。
また、現時点でHRが100人中5人在籍しており、HRに投資をしている会社だと思いますが、組織拡大で発生するであろう課題に対して先手で対応できる体制づくりに取り組んでいます。
このタイミングでHRBPロールを新設しており、ミドルマネジメントの強化・育成にも力を入れ始めています。
組織課題に対して後手の対応が続くと、問題解決にリソースが奪われ、さらに問題を繰り返すという悪循環がまわりはじめるため、いかに未来の人や組織に対して先行投資できるかが勝負だと考えています。
100人を超えた後、過去最大の変化が必要に。
これまで現在に至るまでの組織の変遷を書いてきました。
これまでも多くの変化はありましたが、100人を超えたこれからがカミナシ史上最も大きく組織に変化を加えるフェーズになっています。
未来の構想なので、進める中で変化していく可能性はありますが、現時点での考えを書いていきます。
その1.規模別セグメント組織への移行
カミナシでは企業規模に関わらず、数十名から数千名規模の企業様まで幅広くご利用いただいています。
しかし企業規模によって適した販売・サポートの内容は異なるため、セールス部門では先行して企業規模別にチームを分けて運営をしてきましたが、これからは既存事業のビジネス組織全体を企業規模別にセグメントでわけ、Enterprise(1,000名以上),Mid-Market(100-999名),SMB(99名以下)という3つのセグメントを部門として立ち上げることで、規模ごとに最適化したオペレーションを組み、より早く意思決定が行えるよう組織を作っていく予定です。
その2.複数事業部への移行
カミナシでは現場のあらゆる課題を解決するプラットフォームに進化するため「まるごと現場DX構想」を掲げ、マルチプロダクト化を進めています。
その一貫で先月には、東京大学松尾研究室発のAIスタートアップStatHack社をM&Aしてグループにジョインをいただきました。
そのため、複数のプロダクト開発を進めているのですが、そのうち1つをリリースするタイミングでビジネス部門を新規事業側でも新設する予定です。今後も事業領域の拡がりとともに部門を新設し、各事業が自律的な組織運営をできるようにしていきます。
その3.横断組織の新設
ビジネス部門が複数に分かれる一方で、部門を横断するセントラルな組織も作っていきます。具体的にはマーケティングやパートナーセールスなどを経営直轄のセントラルな組織に移行していく方向で検討中です。
加えて、セントラルな組織に新しくアカウントマネジメントの組織を新設します。
アカウントマネジャーはEnterprise企業の中でも特に大規模なナショナルクライアントに対し、各部門のハブになって、その企業やグループ会社群の「NRR最大化」をミッションに持ちます。特に複数プロダクトのクロスセルを推進する際に高い介在価値を発揮するであろう組織です。
その4.新規事業開発ロールの新設
既存プロダクトのグロースと新規プロダクトの立ち上げを両立し、マルチプロダクト化を進めるためには深化と探索を両立する両利きの経営が必要です。
日々の事業成長に向き合うグロース組織内で不確実性が高く、中長期のリターンを目的とした探索にリソースを配分する意思決定を行うのはかなり難しく、意図的に組織を切り分けて運営すべきだと考えています。
そのため、探索フェーズの新規プロダクトの立ち上げを支援する新規事業推進チームを新設することにしました。このチームにはアントレプレナーシップを持った人材を集め、将来的に新規事業の立ち上げを責任者としてリードできる人材を育成していきます。
その5.プロダクト横断の機能開発チーム
マルチプロダクト化を進める上で、同じような機能を各プロダクトで開発してしまうと車輪の再発明になり無駄が大きいですし、複数プロダクトを併用する顧客にとってはユーザー体験も悪くなります。
最近ではRipplingのParker Conrad氏が提唱した"コンパウンドスタートアップ"というコンセプトを目にする機会も増えましたが、何でもかんでも1つにまとめれば良いという訳ではありません。
「何を共有化し、何を個別化するのか」。プロダクト間の共有コンポーネントをどのようにデザインするかはマルチプロダクト戦略の肝になります。
カミナシではプロダクト横断のミドルウェアのような位置付けになる共有コンポーネントを開発しており、先日第一弾となる機能が完成して運用がはじまっています。今後も継続的に投資を続けていく予定です。
その結果、起きる組織課題
ここまで100人を超えた後に考えている変化を書いてきましたが、
1.既存事業のオペレーショナルエクセレンスの追求
2.シングルプロダクトからマルチプロダクトへの転換
を背景に新しい組織が立ち上がっていく想定です。
次々に組織の箱が増えていく中で、最も大きな組織課題として見えているのがトップマネジメントを担う人材の不足です。特に複数機能のチームを束ねる部門責任者クラスのポジションが倍増してきます。
カミナシにはマネジメントを担うメンバーが現在10名強在籍していますが、今後1年でそういったポジションが約2倍に増える想定です。当然社内からのアサインも行っていきますが、それでも圧倒的に人数が不足しているのが現状です。
最後に
最後は宣伝をさせてください。このような組織課題に対してカミナシでは未来の事業をリードするトップマネジメント候補の採用を絶賛強化中です!
これからのカミナシは過去最大に解くべき課題が多く、ワクワクするフェーズに入っていきます。そして、新設組織の増加により多くのチャレンジングなポジションが生まれてきます。
今回は詳しく触れませんでしたが、新規プロダクトを並行して開発するにあたり、プロダクトサイドでも多くのマネジメントポジションが必要になっています。
少しでも興味をお持ちいただけた方はぜひカジュアル面談でお話しましょう。
今回は以上です!
定期的にTwitterやPodcastでカミナシやSaaSスタートアップに関する発信をしているので、よろしければフォローしてください。
Twitter:@yusuke_kawauchi
Podcast:カミナシSaaS FM、カミナシ全開オープンRadio
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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Special Thanks!!
本記事は我々の株主である ALL STAR SAAS FUNDのブログ記事からインスパイアされて書きました。このブログも非常に参考になるのでぜひご覧ください。
情報公開されている先輩スタートアップのみなさま参考にさせていただき、ありがとうございました。
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