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新生エアレースに期待!

わたしはスポーツがあまり好きではない。はっきりいうと、苦手だ。やるのはもちろん観るのも。子供のころからしっかりインドア派で、あそびといえばお絵描きと読書ばかり。そのうえ群れるのが苦手なので、団体競技のノリにはどうにもこうにもなじめなかった。

しかし、なにもスポーツ全般を毛嫌いしているわけではない(そう見えるかもしれないけど!)。こんなわたしでもハマっているスポーツがある。

その例外的にハマっているスポーツは、”空のF1”、”究極の3次元モーターレース”の異名をとるエアレース。曲芸飛行用のプロペラ機がタイムを競うモータースポーツだ。最高時速は370km最大重力加速度は12Gにおよぶ。

2019年までおこなわれていたレッドブル・エアレース世界大会(RBAR)では、大会ごとのコースで、定められた条件をクリアしつつ、タイムが競われていた。個性豊かな一流パイロットたちの超絶飛行技術はもちろん、パイロットの所属する各チームの飛行戦略や駆け引きが、とてもおもしろい。レース会場の背景となる、大会が開催される都市の個性も、おおきな魅力だ。

ところが、2年前の2019年、RBARは突如終了した。例年8回の大会があるところを半分の4回だけで。レッドブルによれば、「他のレッドブル主催のモータースポーツに比べて関心を集められなかった」のが終了の理由。納得いかないエアレースファンのあいだでは、実際の理由はそれだけではなかったのだろう・・・という、さまざまな憶測が、ソーシャルメディアに流れていた。

その後のパンデミックの状況を考えると、RBARが存続していたとしても、2020年は開催が難しかっただろう。幸か不幸か、パンデミック直前にRBARは終了。プラスに考えるなら、運営側にもパイロット側にも、結果的に充電期間になったのかもしれない。

2021年になっても、世界的に感染拡大は続いているけど、ワクチンの効果もあって(日本はまだまだだけど!)、落ち着きをとりもどしつつある。そんな今年のはじめに、新たなスポンサーのもと、ワールド・チャンピオンシップ・エアレース(WCAR)がたちあげられた。WCARはRBARの遺産を引きつぎ、発展させるという事業計画があきらかになった。

その後、矢つぎ早にWCARの運営の詳細が公表されてきた。「RBARの遺産を引きつぐ」という言葉どおり、RBAR運営の主要な人材がWCARにも抜擢されていて、エアレースファンとしては、とてもとても嬉しい。

WCARのレースは2022年からはじまる計画だという。トップクラスのAero GP1のパイロットは12名。RBARのマスタークラスよりも2名少ない。参戦するパイロットは、先月から1名ずつ公表されていた。

5月2日の夜に、最後のひとり、室屋義秀選手が公表された。室屋選手は、目下の実力ナンバーワン。ソーシャルメディアで公開されていたシルエットからも想像できていたのに、彼ぬきのエアレースなどありえないのはわかっていたのに、発表されるまでは、なんだか落ち着かなかった。

12名のパイロットの顔ぶれは、RBARでいつもトップ争いをしていたマット・ホール、マルティン・ションカ、室屋義秀の3選手を筆頭に、室屋さんの同期ピート・マクロード、新人ながら着実に上位につけていたベン・マーフィ、これからの活躍が期待されていた実力者のフアン・ベラルデ、ミカ・ブラジョー。これらの7名がRBARのマスタークラスから参戦する。あとの5名、ダリオ・コスタ、メラニー・アストル、フロリアン・ベルガー、ケヴィン・コールマン、パトリック・デヴィッドソンは、RBARのチャレンジャークラスからだ。

いっぽうで、RBARのマスタークラスで飛んでいても、WCARのAero GP1のラインナップに入っていないパイロットが7名もいる。すでに引退を表明していた大ベテランのカービー・チャンブリスは仕方がないとしても、上位争いの常連だったマイケル・グーリアンが外れたのには驚いた。あとは、室屋さんの同期で2016年の王者マティアス・ドルダラー。彼は、同じドイツのベルガーさんのチームでサポート側に回るという。世代交代が進んだ印象が強い。

今回リストからはずれたパイロットのなかに、わたしがとくに贔屓にしていたパイロットがいる。フランソワ・ルヴォット選手だ。彼はフランス空軍の戦闘機パイロットあがり。2015年からマスタークラスに参戦していたけど、表彰台に立てたのは1度のみと、苦戦していた。成績からすると、はずれてしまうのは仕方がなかった。現実は厳しい。

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これは2019年千葉大会のパンフレットより。ルヴォットの機体はグリーンを基調に、白と黒でデザインされていてカッコいい。

どこかの大会の中継映像だったかで、彼のチームが映っていたのを観た。チーム全員が黒ずくめのサングラスで、一見コワモテ。しかし口を開けば紳士的で、飛行機もバンカーもお洒落。

カッコいいうえに、輝かしい記録(国際航空連盟の曲芸飛行世界選手権グランプリとかRBARチャレンジャークラス三連勝など)をもちながら、マスタークラスで苦戦中。そうなれば、応援したくなるのが人情だ。

ルヴォット選手はWCARのAero GP1には参戦しないけど、別部門として計画されているジェットエンジンのレースに参戦というシナリオはないだろうか・・・。もともと戦闘機に乗っていたのだから、そんな展開もあるんじゃないかと期待してしまう。

このnoteエントリの見出し画像は、RBAR最終戦となった、2019年9月の千葉大会で撮影したもの。ルヴォット選手の勇姿。主翼下面の白黒ストライプがグッとくる。近い将来、彼の飛行がふたたび観られるのを願って、見出しに使った。

ともあれ、思いのほか早い段階で新生エアレースが決まったのは、ほんとうに嬉しい。はやくパンデミックがおさまって、国内で観戦できるようになってほしい。

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