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病院でかかる医療費を知らされると、患者が希望する検査は減るのか?
米国では、患者が受診する前にあらかじめ医療費を調べることができるサービスがあります。病院間で同じ検査、同じ治療であっても価格が異なる米国では、患者はこのサービスを利用することで、より安価な病院を選ぶことが可能になり、また医療機関間の競争を促進することで、医療費抑制効果が期待されています。
また、患者が医療費をあらかじめ知っておくことで、健康の問題とかかる医療費を天秤にかけて、患者が合理的な判断をすることができるのではないかと期待されています。
しかし、日本では米国と違い、医療費は病院に関わらず一定に設定されており、また医療サービスの単価が米国と比べると低いため、同様の結果が得られるとは限りません。
日本では、病院でかかる医療費を知らされると、患者が希望する検査は減るのでしょうか?
私たちの研究チームが過去に行った研究があります。この研究では、日本の病院において検査費用をあらかじめ患者に提示することで、患者の医療サービス(検査など)の需要(実際にかかった医療費を用いて評価しました)がどのように変わるのかを評価しました。
2016年1月第3週に受診した患者(n=290)に対して、「各種医療サービスの検査費用のリスト」を提示し、比較対照として2015年と2017年の同じ時期に受診した患者(医療費の情報は提供されていません)(n=763)と比較しました。患者の重症度をはじめとする各種要因に関しては、統計的手法を用いてそれらの影響を取り除きました。
結果は、患者一人あたりの総医療費は平均16.1%増えました。また同様に、血液・尿検査費用、画像検査(レントゲン・CT・MRI)費用に限っても、検査費用のリストを提示された人の方が、かかる医療費が多い結果となりました。更には、血液検査及び尿検査を希望する人、またその検査の項目数も多い結果となりました。
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本研究の結果は、日本のように比較的医療サービスの単価が安い国では、患者が医療費を知ることで逆に医療サービスの需要が高まってしまう(そしてその結果として総医療費も増加してしまう)可能性を示唆しています。
また、日本の診療報酬制度下で設定されている医療サービスの単価が、患者の支払い意思額(Willingness-to-pay)を下回っている可能性も示唆されます。
透明性を高めて医療における「情報の非対称性」を解消することは患者の「知る権利」および説明責任の観点から極めて重要なことなのですが、一方でそれによって国の医療費が増加してしまうリスクがあることは私達は十分理解しておく必要があります。
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