『クラシックの迷宮』が示した渡辺宙明の作曲活動の多彩さ

去る10月1日(土)、NHK FMの『クラシックの迷宮』では「作曲家・渡辺宙明の世界」と題し、今年6月23日に逝去した作曲家の渡辺宙明の作品が特集されました。

今回紹介されたのはミュージカル・プレイ『雨ぼうず』からテレビアニメ『マジンガーZ』の主題歌まで幅広く、テレビアニメや戦隊ものの作曲家として名を遺した渡辺さんが歌謡曲や民謡、童謡、さらに映画音楽など様々な分野で活躍したことが実感できる構成となっていました。

その中でもとりわけ興味深かったのは「私個人としては『大鉄人17』を聞きたいところでございますが」と戦隊ものの作曲家としての渡辺さんの作品の中で最も贔屓する作品を紹介しつつ、「シの音とファの音を抜いた、いわゆるヨナ抜きの音階、この日本の伝統的な音階を活用したのが渡辺宙明さんなのです」と解説する片山杜秀先生の姿です。

それとともに、取り上げられた映画音楽の多くが新東宝の作品であった点も興味深く思われました。

何故なら、片山先生は今年7月に刊行された筒井清忠先生の編纂になる『昭和史講義【戦後文化篇】下』(筑摩書房、2022年)に論文「新東宝の大衆性・右翼性・未来性」を寄稿しており、本論での成果の一端が今回の選曲にも影響を与えたことが推察されるからです。

いわば日頃の研究と放送とが結び付いたのが今回の特集であり、その意味でも、『クラシックの迷宮』の特色がよく示された「作曲家・渡辺宙明の世界」であったと考えられました。

<Executive Summary>
"Labyrinth of Classical Music" Emphasises Multiple Phases of Mr. Chumei Watanabe (Yusuke Suzumura)

A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcasted via NHK FM featured Mr. Chumei Watanabe. It might be a meaningful opportunity for us to understand his efforts and achievements through records of various fields.

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