過去60年の都知事の事績から見る「都政の移り変わり」
6月20日(土)と21日(日)は、7月5日(日)に投開票される東京都知事選挙が告示されてから最初の週末でした。
主要候補を中心に、各人がそれぞれの所説を主張し、選挙戦が進められています。
ところで、過去60年間の東京都知事8人の事績を概観すると、主に施設整備の拡充などを重視する政策と生活の質の向上に重きを置く政策とが交互に提起されいているように思われます。
すなわち、1959年から1967年まで務めた東龍太郎は、1964年の東京オリンピックを頂点とし、高度経済成長という時流を捉えた開発重視の政策を進める一方、「革新知事」として名を馳せた美濃部亮吉は3期12年の任期中、「東京に青い空を」という標語が示すように、公害対策や高齢化対策に取り組みました。
美濃部都政を継いだ鈴木俊一は、「地味」という評判に絶えず付きまとわれながらも、財政難に悩んで美濃部時代を受けて経済重視の政策を打ち出し、バブル景気と相俟って都有施設の再開発や「東京テレポート構想」を進め、歴代最長の4期16年の任期を全うしています。
1995年に就任した青島幸男は鈴木都政の集大成ともいえる1996年の世界都市博覧会を中止したことは特筆すべきことながら、その後はめぼしい結果を残すことが出来ないまま1期4年で退任しました。
次に登場した石原慎太郎氏はディーゼル車規制やカラス駆除などを行い、生活の質の向上に努める姿勢を示す一方で羽田空港の拡張や臨海副都心の開発を推進しています。また、石原氏の国政への転出に伴い都知事に選出された猪瀬直樹氏は1年で辞任を余儀なくされたものの、石原都政で副知事を務めた経緯からも、開発に重点を置いた施策を基本としていました。
これに対し、舛添要一氏は首都直下地震を想定した災害対策や都市外交の強化、あるいは「東京ブランド推進キャンペーン」など、東京の都市として魅力を高める政策を打ち出したものの、政治資金問題を巡り任期途中での辞任を余儀なくされています。
そして、現任の小池百合子氏は「都民ファースト」を標榜し、「待機児童」、「介護離職」、「残業」、「都道電柱」、「満員電車」、「多摩格差」、「ペット殺処分」の7つの項目を「0」とする「7つの0」を公約とし、舛添都政以来の東京の魅力を向上させる施策を推進して来ました。
以上のように考えれば、今回の都知事選挙では舛添氏から続く「生活の質の向上の重視」という政策が継続されるか、それとも施設の整備などの拡充を基本とする政策に転換するのかという点が、隠れた争点となると言えるでしょう。
<Executive Summary>
What Is a Hidden Point at Issue for the Tokyo Governor Election 2020? (Yusuke Suzumura)
The 20th and 21st June was the first weekend for the Tokyo Governor Election 2020. In this occasion we examine a hidden point at issue for the election, a conflict between developmentalism and emphasis on quality of life.
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