「政党のキャッチコピー」に対して有権者はどう向き合うべきか
10月31日(日)に投開票される第49回総選挙について、各党は有権者に示す宣伝文句に独自色を出すために腐心しているとされます[1]。
確かに、宣伝文句、あるいはキャッチコピーは多用な有権者に対して自党の公約や方針を簡潔に伝えるためには重要な手段と言えます。
また、選び抜かれた言葉はあたかも一つの芸術作品であるかのように、長く人々の印象に留まることでしょう。
その一方で、近年では選挙のたびに掲げられる宣伝文句は、ひとたび選挙が終われば忘れ去られ、有権者だけでなく政党自身もあたかもそうした宣伝文句が存在しなかったかのような態度を示すのは、われわれが広く知るところです。
こうしたあり方は、あらゆる宣伝文句に共通する傾向であるかも知れませんし、あるいは公約は選挙を有利に進めるための道具であって、選挙が終われば顧みられないかのような政界の様子を反映しているものと言えるかも知れません。
残念ながら前回の選挙時の公約が検証され、標榜された政策や方針がどの程度まで実現されたかが明らかにされる機会は決して多いものではありません。
ましてや公約に比べ、宣伝文句は政党にとっては選挙のための方便という色合いが濃いことを考えれば、「キャッチコピーの検証」といった機運が高まらないのも当然でしょう。
しかし、たとえ選挙のための方便であっても、公党が公職選挙に際して有権者に訴えるのですから、選挙後も宣伝文句に対して各党が責任を持つことは、論を俟ちません。
それだけに、われわれ有権者は各党の公約に対して批判的な視点を持つことが求められるのと同様に、宣伝文句についても言葉の美しさや印象深さといった点に惑わされないよう、注意深くあることが必要なのです。
[1]各党コピー、独自色に腐心. 日本経済新聞, 2021年10月20日夕刊1面.
<Executive Summary>
How Can We Face against Each Party's Slogan for the 49th General Election? (Yusuke Suzumura)
In the 49th General Election, each party advocates slogan to express its policy for the voters. In this occasion we examine a meaning of such slogan for us.