『クラシックの迷宮』の特集「電子音楽の先駆者 ヤニス・クセナキス」が教えるクセナキスの芸術の多様性
昨日のNHK FMの番組『クラシックの迷宮』は「電子音楽の先駆者 ヤニス・クセナキス」と題し、5月29日に生誕100年を迎えた作曲家のヤニス・クセナキスの作品を特集しました。
「聞かなければならない作品はいくらでもある」中で司会の片山杜秀先生が選んだのは、『明るい水への行列』(原題:Procession aux eaux claires、1953年)から『オメガ』(原題:O-Mega、1997年)まで、初期から最晩年に至る8曲でした。
厳選された作品とともに、作曲家で建築家でもあったクセナキスが、数学的な知見を活かして創作し、あるいは演奏会場そのものの設計を手掛けたこと、あるいは細部まで計算しつくされた音楽が最後は新たな創造の余地に向けて開かれていることなど、片山先生の解説もクセナキスの音楽をよりよく知るために欠かせない視点が随所に織り込まれたものでした。
特に、1970年の大阪万博に設けられた鉄鋼館のために手掛けた『ヒビキ・ハナ・マ』(原題:Hibiki Hana Ma、1969-1970年)は、多チャンネル360度の再生装置を伴う、音の持つ様々な可能性を示す作品であり、抜粋ながらクセナキスの音楽の中に秘められた問題性を確認するには十分なものでした。
さらに、最後に紹介された『アンドロメダへの絶対的な旅』(原題:Voyage absolu des Unari vers Andromede、1989年)の特徴を「凧が空に上がりそのまま空高く飛び、宇宙に出るけれども最後まで糸で地上と繋がっているような曲」と解説する片山先生のお話は、クセナキスの作品の超越論的理解ともいうべきもので、実に興味深く思われました。
「放送時間が伸びたのに尺に収まらなかったので、また今度」と「ラジオ歌謡特集」が2回にわたって放送されあことを考えれば、「機会があればまたクセナキスを取り上げたく」という一言の実現が期待された、今回の特集でした。
<Executive Summary>
"Labyrinth of Classical Music" Shows Multiple Characteristics of Iannis Xenakis and His Musical Art (Yusuke Suzumura)
A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcasted via NHK FM featured Iannis Xenakis on 28th May 2022. It might be a meaningful opportunity for us to examine multiple characteristics of Xenakis and his musical art.