「規制改革の実現」のために何が菅首相に求められるのか
首相就任直後の記者会見においても、10月26日(月)に第203回臨時国会で行われた所信表明演説においても、菅義偉首相は規制改革を政権の重要な事項に位置付けています。
一方で、1961年11月に池田勇人内閣が行政の効率的な運営のために組織の改編と再編成を目指した第1次臨時行政調査会を設けたことで本格化した行政改革は、1980年代に入ると国営企業の民営化や種々の規制の緩和となり、1990年代以降は構造改革の形を取ったことは周知の通りです。
行政改革、規制緩和、あるいは構造改革について、これらの取り組みそのものに反対する人は決して多くないと言えます。その一方で、自らの利害に何らかの形で関わる事項が対象となると強硬な反対が起きることは、われわれがこれまで頻繁に目にしてきた光景です。
「総論賛成・各論反対」とは、こうした状況を表現する言葉に他ならないだけでなく、組織だけでなく一人ひとりの関係者は自らに利益となるか不利益であるかという尺度で行動することを示唆します。
それでは、このような状況は何を意味するでしょうか。
どの分野にも改革への賛成者だけでなく反対者もいるのですから、各論が対象となると改革は進展せず、反対者の説得のために時に妥協し、時に譲歩する必要が生じ、最終的に当初描かれた改革の像と異なる結果に至ることになります。
もとより、規制改革を提唱する菅首相は、2012年12月から2020年9月まで官房長官として行政機構の細部まで掌握しているだけに、こうした状況については十分な理解を持っていることが期待されます。
それだけに、菅政権に求められるのは、どのように利害調整を行うか、あるいは規制の枠組みを残しつつどのように弾力的に運用するかという観点から、規制改革に臨むという姿勢であると言えるでしょう。
<Executive Summary>
What Are Important Viewpoints for the Suga Administration to Realise a Regulatory Reform? (Yusuke Suzumura)
For the Suga Administration a regulatory reform is one of important policies. In this occasion we examine what kind of attitude might be required for Prime Minister Yoshihide Suga to realise a reformation.