人々のプッチーニへの親しみを伝える『クラシックの迷宮』の特集「プッチーニ没後100年~NHKのアーカイブスから~」

本日、NHK FMの番組『クラシックの迷宮』は、プッチーニの没後100年を記念した特集「プッチーニ没後100年~NHKのアーカイブスから~」を放送しました。

今回は、プッチーニが1924年11月29日に65歳で没したことを受け、長崎を舞台とする歌劇『蝶々夫人』によって日本でも広く親しまれた作曲家の、歴史的な音源が紹介されました。

取り上げられたのは『蝶々夫人』の主人公である蝶々夫人を2000回にわたり演じた三浦環が、プッチーニとの交流にまつわる回想を交えつつ物語の語り手となり、全体を30分にまとめたハイライト版(1946年4月9日収録、4月13日放送)と、1951年に藤原歌劇団と東京フィルハーモニー交響楽団により録音された縮約版の2つの音源でした。

前者はプッチ―の自宅に招かれて親交を結んだ三浦環にとって最晩年の録音であり、三浦は収録後の5月26日に逝去しています。

そのため、この録音は蝶々夫人の役で世界的な名声を博し、日本の歌劇界を代表する存在であった三浦の肉声を留める、貴重な史料ともなっています。

また、指揮をしたのはマーラーの薫陶を受け、日本においてマーラーからクルト・ヴァイルまで多くの作曲家の作品を上演したクラウスでした。

教育者として日本の音楽家の育成に尽力したものの、今日ではその存在が半ば忘れ去られているだけに、今回の放送は、三浦のプッチーニとの交際を記録するとともに、戦後の日本の音楽界の発展の側面をもわれわれに想起させる重要な機会となりました。

さらに、1951年の録音は笹田和子の蝶々夫人に藤原義江のピンカートン、そして夏川静江の語りにより、『蝶々夫人』を音楽劇に仕立て直したもので、やはり日本の音楽界の発展に寄与したマンフレッド・グルリットの指揮による演奏が紹介されました。

スプリングハイムとグルリットはともに1930年代のドイツにおいてユダヤ系の出自であるために国内で迫害を受け、その難を避けるために来日し、活動の拠点を日本に定めるとともに、指揮活動と作曲活動を王制に行ったという点で類似する経歴を持ちます。

その様な二人が手掛けた『蝶々夫人』の録音は、1940年代から1950年代の聴取者にとって縮約版や独自の構成を取る形式であっても問題のない、広く知られた作品であったことを推察させます。

あるいは、放送時間の兼ね合いから、作品の構成を改変することも厭われなかったという時代の雰囲気をも伝えます。

こうした点で、今回の放送はプッチーニがどれだけ日本の聴取者にとって親しまれた、あるいは馴染みのある存在であったかを、NHKの歴史的音源を通して証明するものであったと言えるでしょう。

<Executive Summary>
The Featured Programme of the "Labyrinth of Classical Music" Implies High Reputation and Familiarity of Puccini for Japanese Audiences (Yusuke Suzumura)

The NHK FM's programme "Labyrinth of Classical Music" featured gamelan named "The 10th Anniversary of the Death of Puccini" on 30th November 2024. It was a remarkable opportunity for us to remember Puccini's high reputation and familiarity for Japanese audiences through historical records of "Madama Butterfly".

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