第216回臨時国会における石橋湛山への注目度の高まりをいかに考えるべきか
石破茂首相が所信表明演説で言及したこともあり、現在行われている第216回臨時国会では石橋湛山の名前が頻繁に言及されています。
石橋湛山の研究に名を連ねる者としてはこうした状況は石橋の名前がより多くの人の耳目に触れるという点で望ましいものです。
その一方で、全集だけで16巻あり、そこに収録されていない著作や論考も多数あるのが石橋湛山です。
そのため、石橋が行った様々な議論のうち、論者がどの程度まで石橋の主張を網羅的に把握しているかという点は議論の余地があります。
何故なら、もし各種の議論の中でも自らの主張に合致する箇所のみを抜き出し、実際の議論の趣旨とは異なる理解を行ったり、あるいは片言隻句を捉えて石橋の議論の全体であるかのように訴えることは、石橋の名前を借りて自らの議論を補強する、ある種の不誠実な論法となるからです。
もとより、あらゆる議論は論拠に対する恣意性を秘めているものです。
そして、そのような恣意性をいかにして避けるか、あるいは自覚的であるかということは、石橋湛山に限らず何らかの原典を参照し、引用する者が注意すべきことに他なりません。
それだけに、今後の国会の議論の中で石橋湛山の所論がさらに言及されるのであれば、果たしてどれほど正確な理解に基づいて議論がなされているのかという点に注意を払うことは、石橋湛山の研究に携わる者にとって重要な事項となることでしょう。
<Executive Summary>
What Is the Important Attitude for Us to Examine the Citation of Ishibashi Tanzan's Discussion at the Both Diets? (Yusuke Suzumura)
The name of Ishibashi Tanzan and his discussion is often mentioned at the both Diets in this extraordinary session, since Prime Minister Shigeru Ishiba cited Ishibashi's address by his policy speech. On this occasion, we examine the meaning of such kind of attitude to cite historical figures discussion to apply their on debates.