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【開催報告】第11回石橋湛山研究学会(2024年12月14日開催)

本日、慶應義塾大学三田キャンパス東館8階ホールにおいて、第11回石橋湛山研究学会が開催されました。

第1部の研究報告では、池尾愛子先生(早稲田大学)、布施豪嗣先生(大東文化大学)、姫野順一先生(長崎外国語大学)が登壇されました。司会進行は上田美和先生でした。

池尾先生は「『東洋経済新報』での労働法制に関する議論について:石橋湛山、鈴木文治、片山潜を中心に」と題し、石橋湛山が構想した協調型労働組合について、明治30年代の高野房太郎に始まる先行する議論の展開と石橋への影響が検討されました。

布施先生の報告「戦時期・復興期におけるケインズ研究者による石橋湛山批判と経済的自由主義」では、日本において最初期にケインズの経済学思想を受容した石橋の議論とケインズの主張との類似点と相違点について、ケインズの『戦費調達論』と石橋の戦中の政策の比較を通じて考察がなされました。

また、姫野先生による発表「石橋湛山における「新自由主義」:受容と独創」は、石橋湛山における新自由主義について、論説及び読書記録から、欧米社会哲学及び経済学の受容のあり方やその影響、あるいは独創性に対する検討が加えられました。

第2部のシンポジウム「石橋湛山とアメリカ」では、佐々木雄一先生(明治学院大学)と楠綾子先生(国際日本文化研究センター)が登壇されました。司会は藤原帰一先生(東京大学)でした。

佐々木先生の講演「近代日本外交から見た石橋湛山」では、石橋湛山の植民地放棄論やヴェルサイユ条約に対する議論などを含む外交論を検討することにより、米国に対する淡々とした批判のあり方や一般世論よりも外交当局者に近い発想であったことなどが明らかにされました。

楠先生の講演「石橋湛山とアメリカ--1950年代の日米関係」は、米国の外交文書を中心に、米国側の石橋湛山への評価の推移や石橋が接触した米国の要人の顔触れ、さらに占領政策、冷戦構造、同盟関係などに対する米国当局と石橋の間の認識の相違などが検討されました。

研究報告においては、それぞれの分野では議論されつつ、従来の石橋湛山研究においては研究途上であった話題が取り上げられ、既存の研究の一層の深まりが示されました。

そして、シンポジウムでは、石橋湛山の言論人と政治家としての活動を考える際に重要な存在である米国が、石橋にとってどのような意味を持ち、いかなる理解がなされたかが明らかにされました。

昨年の石橋湛山の没後50年、そして今年の生誕140年という節目の年を飾るにふさわしい、意義深い大会となりました。

<Executive Summary>
The 11th Conference of the Ishibashi Tanzan Society (Yusuke Suzumura)

The Ishibashi Tanzan Society held the 11th Conference at Keio University on 14th December 2024. On this occasion, there were three research presentations and two keynote speeches.

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