『クラシックの迷宮』が教えるホフマンの新たな魅力

去る6月18日(土)、NHK FMの『クラシックの迷宮』では「裁判官で小説家で作曲家~E.T.A.ホフマン 没後200年~」と題し、今年没後200年を迎えたエルンスト・テオドール・アマデウス・ホフマンを特集しました。

司法官の傍ら小説家として幻想的で霊感に満ちた作品を上梓して後期ロマン派を代表する存在となる一方で、青年期から作曲活動に従事したりナポレオン時代に公職を追われると指揮者として活動するなど、一面で天賦の才に恵まれ、他面では時流に翻弄されたのがホフマンでした。

そのようなホフマンの手掛けた音楽だけでなく、チャイコフスキーの『くるみ割り人形』やオッフェンバックの『ホフマン物語』など、ホフマンの文学に基づく作品も取り上げることで、今回の放送ではその多面的な活動の一端がよく紹介されていました。

特に、『くるみ割り人形』にせよ『ホフマン物語』にせよ、ホフマンの文学作品による音楽は演奏会に欠かせないものの、ホフマン自身の作品は演奏される機会が多くないだけに、交響曲、歌劇『ウンディーネ』のアリア、ハープ五重奏曲など、管弦楽曲から器楽曲までが選びだされたことは、ホフマンの創作活動の多彩さを知るための格好の手掛かりとなりました。

何より、"E.T.A"というホフマンの名前のうち「アマデウス」は元来「ヴィルヘルム」であったものが、モーツァルトへの尊敬の念から「アマデウス」と名乗ったという逸話は、ホフマンの音楽の志向と傾向を知るためにも重要な手掛かりと言えました。

その意味で、時代の思潮と政治的、社会的な動向を背景としつつホフマンの創作活動の内奥に迫った今回の放送も、片山杜秀先生の視座の確かさが実感された内容でした。

<Executive Summary>
"Labyrinth of Classical Music" Tells the Efforts and Achievements of E. T. A. Hoffman (Yusuke Suzumura)

A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcasted via NHK FM featured Ernst Theodor Amadeus Hoffmann on 18th June 2022. It might be a meaningful opportunity for us to understand multiple characteristics of Hoffmann and his musical art.

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