東京都知事選挙における一部の候補の選挙活動をわれわれはどのように評価すべきか

今回の東京都知事選挙は現職の小池百合子候補が圧勝し、告示時点では多くの都民にとってなじみのない存在であった石丸伸二候補が躍進して次点となり、当初は小池候補との対決が注目された蓮舫候補の支持が伸び悩んで第3位に終わるという結果となりました。

この点のみを眺めれば、各種選挙でよくみられる光景ということになります。

しかし、首長選挙として史上最多となる56名が立候補するとともに、一つの政党から複数の候補者が立候補したり選挙ポスター掲示板を事実上売買したり、あるいは政見放送や選挙公報で都政に直接関係のない話題を主張したりといった点は、公職選挙としてこれまでにない光景であったことに変わりはありません。

もちろん、こうした状況について様々な意見があることは当然です。

例えば、これらはいずれも売名行為であったり金銭的な収入を得ることを目的としているのであり、何らかの注意を払えば相手の目的の実現を助長することになるのであって、いずれにしても当選することはないのだから相手にしないのが賢明であるという意見もあるでしょう。

確かに、その行動を無視すれば、人々に名前を売り込み、あるいは何らかの形で選挙活動を通して収入を得ようとする目論見を頓挫させることになります。

しかしながら、当選することを目的とせず、あるいは都知事選挙であるにもかかわらず都政について全く言及しないような候補者たちが多数現れたことを些事と捉え、選挙が終わればそれらの人々の姿も雲霞の如く消え去るとすることは、一見すると懸命なように思われながらも、実際にはより大きな問題を残すことになります。

すなわち、こうした態度は、公職選挙を取り巻く状況が変化に直面しているにもかかわらず、あえて普段と変わらないことだと考えるために、事態を適切に理解し、対処する機会を奪いかないのです。

そして、こうした状況が重なることで、実際には異常な事態であるはずの出来事が日常の光景の中に入り込むのなら、その結果はどのようなものになるでしょうか。

公職選挙のあり方だけでなく、そこに立候補する人たちや当選者たちの姿にも好ましくない影響を与えかねません。

その意味で、たとえ一つひとつは一過的で取るに足らない現象であったとしても、その出来事が積み重ねられればより重大な変化が生じるということに、われわれは自覚的でなければなりません。

もしそうでないのなら、有権者が一票を投じるという貴重な権利を行使するための重要な判断が妨げられ、公職選挙そのものが形骸化することになりかねないのです。

<Executive Summary>
What Is the Meaning of the Campaign of the Election for Tokyo Governor 2024? (Yusuke Suzumura)

The Election for Tokyo Governor was held on 7th July 2024 and Candidate Yuriko Koike was elected. On this occasion, we examine the meaning of the Campaign of the election.

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