「音頭の持つ可能性」を伝えた『クラシックの迷宮』の新年特集「音頭でお正月」
本日、NHK FMで放送された『クラシックの迷宮』は、2024年最初の放送ということで「音頭でお正月」と題して行われました。
毎年、新年最初の放送は各種のニューイヤーコンサートにちなみ、ポルカやワルツを特集してきた番組ながら、今回は司会の片山杜秀先生による「クラシックのポルカやワルツ、ギャロップに相当する日本の音楽は音頭」という「仮説」に基づき、江戸時代から21世紀の現在に至るまでの各種の音頭が取り上げられました。
三重県の民謡の『伊勢音頭』や大阪府の民謡の『河内音頭』などの伝統的な音頭に始まり、1933年の『東京音頭』や1964年の『東京五輪音頭』、1970年の『万国博覧会音頭』、さらには『グズラ音頭』に始まるテレビアニメ番組における音頭や『デンセンマンの電線音頭』のようなバラエティー番組と音頭の関係など、多様な作品が紹介されました。
一見すると無秩序にも見える今回の選曲は、「囃子を付ければ音頭となると言っても過言ではない」という考えを背景に、人々が熱狂するとともに、「ええじゃないか」と現実の世界の様々な出来事を忘却する「熱狂と忘却」という音頭の持つ特徴を踏まえ、あらゆる音頭はそれが作られた時代の世相と不可分であることを示すものでした。
片山先生の博覧強記ぶりが遺憾なく発揮された選曲と、その選曲を支える音頭に対する確固とした理解は、新年最初の回にふさわしい、華やかさとこの番組ならではの色合いをもたらしました。
それとともに、かつて小島美子先生がNHK FMの番組『日本民謡大観』で取り上げた様々な民謡が、その時々の人々の生きる姿を濃密に描き出していたように、今回の放送も、江戸時代から現代へと続く人々の歌としての音頭の姿の変遷を鮮やかに辿るものでした。
もちろん、「クラシック番組」の中で音頭が特集されることに奇異の念を持つ聴取者もいることでしょう。
しかし、「クラシックの名曲」の作られた当時は聴衆にとって同時代の音楽であるとともに、しばしば流行的な音楽であり、先端的な音楽でもありました。
それだけに、世俗的な分野と思われがちな音頭も、後の人々にとっては「クラシック」となる可能性を秘めていることを聴取者に示した、いつもながらに意義深い『クラシックの迷宮』となりました。
<Executive Summary>
"Labyrinth of Classical Music" Implies the Possibilities and Contributions of "Ondo" to the Field of Classical Music (Yusuke Suzumura)
A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcast via NHK FM featured "Ondo" to celebrate the new year on 6th January 2024. It might be a meaningful opportunity for us to understand the possibilites and contributions of "Ondo" to the field of classical music.