続編が待望される『クラシックの迷宮』の「坂本龍一追悼特集」
本日放送されたNHK FMの『クラシックの迷宮』は、「“世界のサカモト”と呼ばれた男 〜音楽家・坂本龍一を偲んで〜」と題し、今年3月28日に逝去した坂本龍一さんを追悼しました。
今回は、映画音楽やテレビ番組の付随音楽で知られた坂本さんの器楽曲が集中的に取り上げられました。
ラヴェル、ミヨー、初期のメシアン、三善晃に似た作風であることを指摘するとともに、高橋悠治の影響の強さの持つ意味を、実際の作品を通して解き明かすのは、司会の片山杜秀先生です。
特に、集約・体系化し、大規模な管弦楽曲を作るという意味における帝国主義やアカデミズムに反対する高橋悠治の音楽観が、器楽曲の場合では小規模な作品となり、アカデミズムの枠組みからは逸脱するポップスに移行するという坂本さんの音楽活動の中に表れているという見立ては、興味深いものでした。
それとともに、「クラシックであれ前衛であれポップスであれ、作品の佇まいは坂本龍一さんならではである」という趣旨の片山先生の分析は、今回取り上げられたピアノ曲や弦楽四重奏曲だけでなく、坂本さんの代表作のひとつ言うべき映画『戦場のメリークリスマス』や、さらには筝曲にも応用可能なものです。
こうした分析を傍らに置きつつその作品に改めて耳を傾けると、坂本龍一さんのある意味で極めて純真な作風と、音楽家としての多面的な活動とがより一層明瞭な輪郭を描きつつ、聞き手に迫ってきました。
それだけに、番組の最後に「機会があれば、続編を行いたい」という片山先生の一言が実現されるとともに、今日の放送では取り上げられなかったイエロー・マジック・オーケストラや様々な歌手に提供した作品などが坂本龍一さんの音楽の中でどのように位置付けられるか検討されることが期待されました。
<Executive Summary>
The "Labyrinth of Classical Music" Demonstrates Multiple Aspects of Professor Ryuichi Sakamoto and His Music (Yusuke Suzumura)
A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcasted via NHK FM featured "The Man Who Called World-Renowned Musician" on 3rd June 2023. It might be a meaningful opportunity for us to understand multiple aspects of Professor Sakamoto and his activities through influences and relationships between past comporsers and their view toward music.
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