清瀬保二の存在の重要さを示した『クラシックの迷宮』の特集「武満徹の師 清瀬保二生誕125年」
今日のNHK FMの『クラシックの迷宮』は、「武満徹の師 清瀬保二生誕125年」と題し、今年1月13日(月、祝)に生誕125年を迎える作曲家の清瀬保二を特集しました。
現在、世界各地で開催される音楽界の中で最も頻繁に演奏される日本人の作曲家は、武満徹です。
その武満が作曲を師事し、『ロマンス』(1949年)を献呈したり、あるいは松平頼則や早坂文雄とともに結成した新作曲派協会の第7回作品発表会でピアノ曲『2つのレント』を発表して作曲家としての第一歩を踏み出す契機を作ったのが、清瀬保二です。
一方で、清瀬の作品は、作曲を指導した武満に比べれば演奏される機会は皆無に近く、録音も十分な数が残されているとは言えません。
そうした中で、最終的には独学で作曲を修めたとされる武満にとって清瀬の存在がどれほど重要であったかを具体的な作品に即して検討したのが、今回の放送でした。
例えば、日本の伝統的な楽器を西洋音楽の語法で表現し、管弦楽を伴奏とする独奏楽器としての可能性を実証するとともに、武満の国際的な名声を確立した『ノヴェンバー・ステップス』(1967年)についても、清瀬が1964年に作曲した尺八三重奏曲における尺八の扱い方との比較を通して、その独自性と類似性とが指摘されました。
あるいは、1981年に福井謙一がノーベル化学賞を受賞した際、授賞式で『日本祭礼舞曲』(1942年)が演奏されたことで清瀬の国際的な名声が高まったことは、『弦楽のためのレクイエム』をストラヴィンスキーが高く評価したことで日本国内での知名度が向上した武満の姿に重なるものです。
さらに、室内楽曲や声楽曲まで幅広く手掛けたことも、武満の作曲活動の先駆をなすといってよいものでした。
この様に、今日、われわれが耳にする機会が多く、その作風についてもよく知られる武満徹を手掛かりとして、多くの聞き手から半ば忘れ去られた存在といってよい清瀬保二の姿を現在によみがえらせようという試みは、司会の片山杜秀先生ならではの意欲的なものです。
こうしたところからも、改めて『クラシックの迷宮』が日本の音楽史の発展の過程をたどるために大きな役割を果たしていることを示した、今回の放送でした。
<Executive Summary>
"Labyrinth of Classical Music" Demonstrates the Importance of Kiyose Yasuji to the Development of Japanese Music (Yusuke Suzumura)
A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcast via NHK FM featured Kiyose Yasuji to celebrate his 125th Anniversary on 11th January 2025. It might be a meaningful opportunity for us to understand the importance of Kiyose to the development of Japanese music.