ワルツを通して「クラシック」の広がりと可能性を示した『クラシックの迷宮』の特集「ニューイヤーの迷宮~ポーランドとウクライナとロシアのワルツ~」
本日放送されたNHK FMの『クラシックの迷宮』は「ニューイヤーの迷宮~ポーランドとウクライナとロシアのワルツ~」と題して行われました。
昨年は特集「音頭でお正月」が組まれたものの、2023年までは新年最初の放送は各種のニューイヤーコンサートにちなみ、ポルカやワルツを特集しており、今回は従来の特集に戻った形です。
そして、今日の放送は「ポーランド、ウクライナとロシア」ではなく「ポーランドとウクライナとロシア」と3つの国名が「と」で結ばれたところに妙味がありました。
すなわち、単に3つの国を並べたのではなく、ロシア、ウクライナ、ポーランドの3国は国境を接しており、かつてはポーランド分割やウクライナ分割によってロシア帝国の影響を強く受けたという歴史的背景を参照しつつ、その文化的な連続性と断絶とに注意を払うことを聴取者に促しました。
また、それぞれの国に生まれた作曲家たちが、祖国を離れて他の地域で活躍しつつ、故郷の文化や心性をワルツという一つの確立された表現形式にどのように反映したかという点に焦点を当てたのが、今回の特集の勘所でした。
実際、ポーランドのショパン、ロシアのグリンカ、グラズノフ、ウクライナのラフマニノフ、シマノフスキらが取り上げられているものの、いずれも郷里を離れて異郷で音楽活動を行ったり、他郷でその名声が高まった人物でした。
特にラフマニノフやシマノフスキは、しばしば「ロシアの作曲家」として取り扱われるものの、出身地がロシア帝国領としてのウクライナであった点は、司会の片山杜秀先生の着眼点の鋭さを示します。
さらに、カトワールやヴィエニャフスキといった、音楽史的には重要ながら普段は演奏される機会の多くない作曲家の作品や作家のトルストイが手掛けたワルツを取り上げたことも、音楽の持つ多様な性格を強調するものでした。
その意味で、2025年最初の放送となった今回も、「クラシック」の広がりと可能性を改めて示した、いつもながらに意欲的で挑戦的な『クラシックの迷宮』となったと言えるでしょう。
<Executive Summary>
"Labyrinth of Classical Music" Implies the Possibilities of Waltz (Yusuke Suzumura)
A radio programme entitled "Labyrinth of Classical Music" (in Japanese Classic no Meikyu) broadcast via NHK FM featured Waltz to celebrate the new year on 4th January 2025. It might be a meaningful opportunity for us to understand the diversity of "classical music" from waltz.