【参加報告】公開シンポジウム「「へだたり」の哲学、人間理解の深化、共生社会の模索―牧野英二著『京都学派とディルタイ哲学』をめぐる対話―」
去る2月22日(土)、法政大学市ヶ谷キャンパスボアソナード・タワー26階スカイホールおよびオンラインで、公開シンポジウム「「へだたり」の哲学、人間理解の深化、共生社会の模索―牧野英二著『京都学派とディルタイ哲学』をめぐる対話―」が開催され、オンライン形式で参加しました。
本シンポジウムは、2024年8月に法政大学名誉教授の牧野英二先生が出版された『京都学派とディルタイ哲学―日本近代思想の忘却された水脈』(法政大学出版局)に基づき、牧野先生と野家啓一先生(東北大学)による総論と対談、8つの章の内容に即した各論、そして共同討議の3部により構成されました。
いずれも『京都学派とディルタイ哲学』をよりよく知るために重要な手掛かりを提供するとともに、第2部の各論において4人の登壇者が行う報告を受け、著書の記述の詳細な説明や補足を行う牧野先生のお話は、同書に収まりきらなかった論点が多数あり、今後のさらなるご著書で一つひとつの議論が一層入念に検討されることを予想させるものでした。
また、ディルタイの「歴史的理性批判」に対する西田幾多郎、田辺元、和辻哲郎、三木清の受容と理解のあり方の検討を通して「歴史的構想力の批判」へと踏み込み、この批判が目の前で起きている様々な問題を受け止め、時に解決し、時に克服するための重要な手掛かりを与えるとする同書の視点は、カントの哲学の研究の成果をいかにして現実の世界に適用するかに取り組んできた牧野先生の姿そのものに他なりません。
その意味でも、本書はディルタイの研究とディルタイの哲学と京都学派の関係の検討を通して、今を生きるわれわれにとって哲学がいかなる意味を持つかを考える試みでもあり、今回のシンポジウムはそのような特長をより明確に示すことに大きく寄与したと考えられました。
<Executive Summary>
Public Symposium "The Philosophy of 'Distance', Deepening Human Understanding and Exploring the Possibility of a Symbiotic Society" (Yusuke Suzumura)
Public Symposium "The Philosophy of 'Distance', Deepening Human Understanding and Exploring the Possibility of a Symbiotic Society" was held at Hosei University on 22nd February 2025.