「コロナ対策の陳謝」ではなく速やかな行動が求められる菅義偉首相
今日、菅義偉首相は衆議院予算員会で答弁し、新型コロナウイルス感染症への対応によって医療体制が逼迫する現状について、「責任者として大変申し訳ない」と陳謝しました[1]。
政府の新型コロナウイルス感染症対策本部長である菅首相が医療体制の整備を急ぐ方針を示したことは、医療機関で必要な治療を受けられずに死去した感染者がいるという現状に鑑み、適切な対応であると言えるでしょう。
その一方で、人口当たりの病床数が世界で最も多い日本における新型コロナウイルス感染症の感染者数は、例えば世界で最も感染者数が多い米国の約1.4%でありながら、医療体制の逼迫が取り沙汰されている点は見逃せません。
もちろん、それぞれの国や地域で医療体制が異なり、医療機関の規模も同一ではありません。そのため、日本と諸外国を比較して医療体制の逼迫の是非を問うことは容易ではないでしょう。
しかし、昨年4月1日の時点で厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が医療供給体制の強化が喫緊の課題であることを指摘するなど[2]、重大な問題であることは「新型コロナ問題」の早い段階から明らかとなっていました。
また、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部も2020年6月19日には事務連絡「今後を見据えた新型コロナウイルス感染症の医療提供体制整備について」を通知し、「感染ピーク時のみならず、感染拡大の経過や収束時期も見据え、時間軸を踏まえたフェーズに応じた病床確保等の実施」を行うことを示しています[3]。
こうした取り組みに鑑みれば、新型コロナウイルス対策として病床の増加の方針を掲げながら実際には目標を達成できていないことは明らかです。
そして、医療体制の逼迫を政府の新型コロナウイルス感染症対策本部長が謝罪する状況が生じている以上、今後さらに感染が拡大し、重篤な症状を呈する患者が増加しても病床を確保することが出来なければ、治療を必要とする人に対応できない「医療崩壊」が生じかねません。
それだけに、菅首相には、「医療崩壊」を防ぐための具体的な対策とともに、時宜を得た対策が示されながら実現しないままとなった問題を直視し、いかなる構造的な課題が存するかを明らかにするために努力する必要があります。
このような努力は政権が重要な政策とする規制改革にも通じることを考えれば、菅首相には陳謝に留まらず、速やかに行動することが求められるのです。
[1]首相「必要な検査できず」. 日本経済新聞, 2021年1月26日夕刊1面.
[2]「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年4月1日). 厚生労働省, 公開日未詳, https://h-crisis.niph.go.jp/wp-content/uploads/2020/07/20200716101527_content_10900000_000617992.pdf (2021年1月26日閲覧).
[3]今後を見据えた新型コロナウイルス感染症の医療提供体制整備について. 厚生労働省, 2020年6月19日, https://www.mhlw.go.jp/content/000664779.pdf (2021年1月26日閲覧).
<Executive Summary>
What Is an Important Policy to Prime Minister Yoshihide Suga to Avoid Healthcare Collapse? (Yusuke Suzumura)
Prime Minister Yoshihide Suga apologised government's misconducting against the COVID-19 at the House of Representative on 26th January 2021. What is an important policy to Prime Minister Suga is to avoid healthcare collapse and check structural problem in the government.