身体と心を考える 聖地熊野の漢方薬屋6
低下している現代人の体温調節機能
ここ数年夏は毎日猛烈な暑さが続き、私は以前から日本は温帯ではなく亜熱帯になったとお客様にも話してきました。でもそれも修正しないといけません。亜熱帯から熱帯になったと。この猛暑の中皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
今回は私達の体温について。
体温は自律神経が維持
人には、意識せずに体温、消化、代謝、免疫などの身体の機能を調整してくれる神経、自律神経が備わっています。大別して、「昼の神経」と言われる交感神経、「夜の神経」と言われる副交感神経の二つです。例えば、朝自然に目が覚めるのは、交感神経が優位になることから、夜眠たくなるのは、副交感神経が優位になるからです。
この自律神経の働きが低下すると、エネルギー代謝にも影響、疲労がとれないとか、ダイエット効果が低下して太りやすくなったりします。皮膚の新陳代謝が低下すると、シミやシワ、くすみが出来やすくなり、免疫系に影響がでれば、風邪をひきやすくなり、回復も遅れます。加えて、ホルモン系の失調は、月経前症候群(PMS)やプレ更年期の原因となりうると言われています。
自律神経の乱れは現代人の宿痾
自律神経の乱れは、多くは日常のストレスや生活環境が、地球の本来の自然環境とは大きく異なっているからという説もあります。自律神経の働きの一つである体温調節は、汗をかいて上昇しようとする体温を逃がしたり、寒いときには震えて体温低下を抑えたりして、自然環境に体内環境を合わせようとします。しかし、現代は冷暖房完備が当たり前で、夏は屋内外の温度差による不調に悩まされる人が多く見られます。夏でも冷えを訴える方が増加もしています。この時期に、猛暑に対して体温調節を司るのが自律神経なのです。
通常、「寒い」とか「暑い」とか肌が感じると、脳がそれを察知、自律神経を働かせます。暑さを感じると血管を拡張し、熱を放出しますが、エアコンなどにより自律神経が麻痺したり、激しい温度差で混乱してしまうと、冷房病といわれる状態に陥ります。
入浴で発汗のトレーニングと漢方
最近の冷房病には「汗をかかない」という訴えもあり、これは70年代以降に生まれた人に多く見られます。肌の表面のエクリン腺という汗腺の一つが約230万個あり、この中には機能しているもの(能動汗腺)と機能していないものがあります。70年代以降生まれの現代人は能動汗腺が減少しているといわれ、汗をかけない状態になっていると指摘されています。これを「能動汗腺衰退症」と言い、これによって、体温の調節能力が落ち、熱中症が増加すると考えられます。汗腺の数は3歳児までに決まるとも言われ、生まれつきエアコン完備の部屋で過ごす乳児は自ずと外気温に対するセンサーが悪くなるとも思ったりします。
漢方では、その対策として、乱れた自律神経を調整する作用にすぐれ、血流も改善する「おたね人参」や熊笹、赤松葉配合もの、当帰など補血といわれる作用のあるものが入った品などを用います。また少しでも汗をかくトレーニングとして、夏場でも浴槽に浸かる習慣は大切です。ぬるま湯に10分以上浸かることでじわっと発汗してきます。ただ、脱水予防に入浴前後の水分補給をお勧めします。特にご高齢の方は喉の渇きに鈍感になっていますので、ご注意ください。
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