旅|知らないことがあることを知る
風を受けて、目黒川の水面が絹のようにたゆたう。唯一無二の美。人間には創造できない、自然による麗しき景観。視線を上へと、四方へと向ける。心を開いて眼を注げば、そこにある造形の魅力に気づく。屹立するビルでさえ、独立した作品のように映る。
MUJI HOTELに泊まった。木の温もりが周囲を覆い、そこからは雑音が消え失せる。無駄な線さえも存在しない。ほのかに灯る蝋燭のように、銀座の街並みが発する光を窓越しに見つめた。穏やかな川の流れのように、時間の移ろいに身を浸す。
八月に不釣り合いな涼風は僕を名古屋へと運んだ。ガラス張りのビル群がその気配に拍車をかける。名鉄名古屋駅はさながら迷宮のようだった。旅には新しい発見がある。動くことでしか、得られないものがある。それは言い換えれば、「知らないことがあることを知る」ということなのかもしれない。