Jリーグ 観戦記|色彩の対比|2021年YBCルヴァンカップ決勝 名古屋 vs C大阪
「完璧な空」があるとすれば、それは二〇二一年十月三十日を指す。澄んだ湖のような透明感があり、陽光が線を帯びて視界を照らす。座席に身を預け、僕は浦和美園駅に辿り着いた。人々が発するざわめきが肌を漂う。埼玉スタジアム2002は不時着した宇宙船のようだ。視線を上へと向けた。鎮座する要塞。剛健な質感。鋭利な屋根。興奮のスタジアム。この場で生まれた、数多くの熱狂。感情の渦が身体を駆け巡る。
時間をたっぷりと使い、埼スタを味わった。手で触れるようにして。太陽を浴び、その温もりが身体の芯へと伝わる。ルヴァンカップの頂点を決する戦い。その一戦は、色彩の対比を楽しむ舞台でもある。バーバリアンレッドと桜。そのコントラストを思い描いて今日を迎えた。ピッチは青々とした光沢を浮かべる。二色が混ざり、どんな色が生まれるのだろう。
雄大なアンセムが轟く。日本サッカーの頂点を決める有数の場。そこにある個性。そこにしかない風景。唯一無二の景色を眼にし、時間の重なりと伝統の重みを実感した。
5−3−2。名古屋が見せる重厚な守備。隙間を埋めるようにして並ぶ五人の選手たち。この試合の象徴は布石として立ち上がりからピッチに描かれる。
セレッソの4−4−2は姿を変える。攻撃への転換。左サイドバックの丸橋が中盤へと身を移す。中央へと立ち位置を変える乾。ディフェンスラインへと下がる原川。スペースへの侵入。ポジションチェンジによる攻撃のオートメーション。名古屋とセレッソの戦いは刻一刻と時間が過ぎていく。
試合は前田のヘディングによって最初の山場を迎える。後半の笛が吹かれた直後の47分。コーナーキックからゴールは生まれた。赤と黄色に染められたゴール裏へと前田は駆ける。名古屋の守備へと宿ったかのように、その勢いは守備の緊密さを高めていく。5−4−1。時に5−5へと変貌するディフェンスはセレッソの攻撃陣を締め上げる。清武も投入して、その流動性は高まった。しかし、名古屋の守備組織は破綻することなく、大蛇のごとく、セレッソの手足を掴んで離さない。最後尾へと下がったマテウスがその象徴だ。
セレッソも数式を解くように、パスをつないでゴールへと迫った。しかし、名古屋の守備が決壊することはない。選手の受け渡し。前後左右へと向ける視線と意識。職人技のような守備を凝視した。そして、その守備は攻撃を意識しているからこそ、より効力が高まるのかもしれない。前線へと飛び出す相馬、齋藤、シュヴィルツォクを眺め、そんな感想が身体を満たす。
稲垣のシュートがネットを揺らし、試合の幕は閉じる。贅肉を削ぎ落としたかのような、無駄のない戦いだった。幸福に満たされたファイナル。慎重さと大胆さが融合し、良質な試合へと昇華した。余韻。そんな言葉が、この試合には似合う。
名古屋 2-0 C大阪