Jリーグ 観戦記|触れた温もり|2021年J1第34節 川崎F vs 浦和
雪を積もらせた山々のように、遠くに雲が見える。視界には白光が差し、染め抜かれたライトブルーの空が世界を覆う。その色を反射させたかのように、水色の衣をまとって闊歩する人々。鳥のさえずりが聞こえる。穏やかな気配を抜け、この日も等々力を目指した。
目線の先には赤き戦士たち。九月のルヴァンカップ。その記憶がよみがえる。刻々と立ち位置と身体の向きを変える選手たち。理をもってボールは前進する。体系化されたサッカーは僕に鮮烈な印象を残した。
理知的なサッカーはこの日も変わらない。パス・アンド・ムーブ。パスが放たれ、出し手、受け手、周囲の選手たちが水を求める魚のように、スペースへと身を移していく。
しかし、川崎のプレスが立ちはだかる。相手から時間と空間を絞り、同時に削るようなプレスを浦和に繰り出し続けた。攻撃に転じた際の分厚き陣容。浦和の視点に立つ。その充実ぶりを前に、重心を前へと向けることを躊躇せざるを得ない。
家長は攻撃を創造する。全ての始まり。ボールを我がものとする、強靭かつ巧みな腕捌き。家長は相手の動きと時間を止める。そして、その動きが乗り移ったかのようなプレーを見せる旗手。身と身が衝突する舞台を駆け抜ける。激しい衝突を跳ね返す。左サイドバックとして始まった今季。自分のことのように、眩いばかりの成長に眼を細めた。
隙。歪み。試合中に起こる、小さな変化を捉え、浦和はゴールを決めた。小泉を筆頭に、ルヴァンカップで観衆を魅了した軽快なサッカーには影が落ちた。しかし、苦しみながらも、全体が崩壊しない土台の強さも感じた。着々と強くなる浦和を眺め、リカルド・ロドリゲスの手腕が確かであることを再認識した。
煌々と宙を舞うリボン。連覇を達成した川崎。弾ける笑顔。淡々と会場を去る、浦和を愛する者たち。背番号十八。そして、二十五。涙を浮かべる旗手。暮れなずむ午後の空を背景に、一つ一つの場面が写真のようにして、脳裏に焼きついている。時間に左右されない、変わることのない温もりに今日も触れた。
川崎F 1-1 浦和