違和感で見る「違和鑑賞」 (中学社会科授業として)
こんにちは。アーティスト・美術鑑賞プログラマーの佐藤悠です。
21年11月に東京大学教育学部附属中学校で行ったプログラムを紹介します。
中学3年生の社会科の授業にアートワークショップを挟み、当時の文化に触れながら理解を深めるという独特なカリキュラムで、「日本文化が海外に与えた影響について」という内容が私の担当でした。
そこで、モネ「ラ・ジャポネーズ」を鑑賞しつつ、「ジャポニスム」について紹介する授業を行いました。生徒さんにはタブレットが支給されているので、そこに作品を映しての鑑賞となりました。
いつもは少人数に長時間のプログラムを行うことが多いのですが、今回は40人相手に50分の授業という枠組みだったので、少し切り口を工夫して、「違和感」というテーマを設定して鑑賞を行いました。
生徒さんの口から意見をいろいろと聞きたいと思っていたのですが、いきなり「鑑賞して自由に感じたことを発話しなさい」だと、さすがにハードルが高いかなと感じたり、全員と一気に対話するのは難しいだろうという懸念がありました。
そこで、まずは「違和感」をとっかかりに、何か妙だな。変だな。。と感じるところを作品から見つけて、3分で最低5個以上、ゲーム形式でワークシートに書き出してもらいました。
正面から自分の意見や解釈を作って発表するというのは、ちょっと気恥ずかしさもあるかなと思ったので、「違和感をツッコむ、指摘する」というアクションにすり替えてアプローチしてみました。
この形だと、多少ひねったり、難癖をつけるような解釈になったり、「あえて」ツッコむ・指摘する状況という建前ができるので、素直な自分の意見を晒している感覚が緩和されるのでは…というねらいがありました。実際は、ツッコミや指摘には個々の解釈が反映されるので、羞恥心を抑えつつ、良い塩梅の意味生成ができたのではと思います。
絵の題材的にも、異国風の女性が着物を着ていたり、うちわが壁に貼り付けられていたりと、よく見るといろいろ違和感のある作品なので、そこもマッチして、どの生徒さんのワークシートもたくさん違和感が書かれていました。
次に意見を4人組でシェアし、それぞれが自分の発見した違和感をグループ内で発話してもらいました。普段からグループ学習の習慣があったので、ここはとてもスムーズで、またどのグループも互いの意見交換で盛り上がっていました。
4人全員の意見を共有できたら、何人かを指名してグループ内でどんな意見があったかを教室全体に発表してもらいます。発表内容は自分の意見でも、グループ内で盛り上がった他の人の意見でも構いません。その発話をきっかけに、さらに「なぜそう感じたの?」「どうしてそんな違和感が描かれたと思う?」とこちらからも問いかけ、それぞれの考えを答えてもらいます。
流れ的には、徐々に発話や対話に慣れてもらい、40人全員がある程度発話しながら、擬似的に全体とファシリテーターで対話型の鑑賞を行うようなイメージになっています。
「なぜ?」という問いかけへの反応も、すぐ返答が返ってきたり、すでにグループ内で仮説が話されていたり、返答に対して他のグループで話が始まったりして、対話しながら解釈の広がりを教室全体で楽しめました。
さまざまな意見や、そこからの想像をクラス全体で共有できたら、最後に「ジャポニスム」についてのプリントを配布し、作品や時代背景を解説して、授業を終えました。
感想も感触も上々だったので、似たフォーマットでいろいろ他の内容にも対応できそうです。ただ、1日で3クラスも回ったので喉が潰れましたが‥
やっと1時間程度のプログラムも作れるようになってきたので、来年はまたリーチが広がったらいいなと思います。
プログラムの詳しい時間配分や、内容はこちらにアーカイブしました。台本的に進行内容を書き起こしたので、授業の流れがよく掴めるかと思います。気になる方はどうぞ。
◆過去の記事
中学校向けのプログラム
実はこのプログラムは、今回の授業のための検討用に実施してました↓
内容が収まりきらなかったので、本番では作品を変更してます。
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