「なんて言葉をかけていいか…」

この1年は夏の終わりに母が急死した事もあって、「辛い年だったな…」という印象がある。

しかし、それと同じくらいに。
人の温かさに触れた年でもあったように思う。

何気ない言葉がこんなに心に届くものだなんて、知らなかった。

「なんて言葉をかけていいか…」と思うような時、というのは存在するが。
まさに昨年の自分の状況は、そうだったのだろうな…と思う。

そういう時に、何を言うべきか。

ずっと、わからなかった。何か言葉をかける方がいいのか、かける言葉がないならば口をつぐんでいた方がいいのか。

これだけ大人をやってきているのに、そんな事もわかってなかった。

ただ今回、自分が声をかけられる立場になってみて。
言葉なんて、気持ちさえ感じられれば何でもいいんだ…と気がついた。

良い事うまい事なんて言わなくても。
「大変だったね」、そんな寄り添う一言だけでもいいんだなって。
そういう何気ない一言でも、こんなに心に響くなんて。
ずっと知らなかったよ。


ほんの些細な声かけかもしれないけど、これが思ってたよりもずっと嬉しい物だった。

こちらを思いやり、気遣ってくれる。
そういう、相手の真摯な気持ちさえ込められていれば…

些細な一言が、魔法のように心に染み入る一言に変わる。

母を亡くした後はそんな言葉を、直接でもお手紙でもいただいて。
その度に、人の温かさに少し力をもらったように感じられ、助けられた。

あと「本当に泣きたいのはこの人なんだから…」と。
辛い思いをした人の前で当事者ではない人間が泣くのは、良くない事だって…どこかで思い込んでいたんだけれど。

心からこちらを案じてくれ、抑えようとしても自然と滲む涙というのは。
それはもう、破壊力抜群で。
そんなものを目にしてしまったら、思わず一緒に泣いてしまうから…

日々の生活の為に、心を守る為に覆っていた殻が少し破れて。
ほんの少しだけ本音が吐露できて。

全然、悪い物じゃ無かった。

むしろ「ああ、心というのは、気持ちというものは。頭で考えての行動よりもずっと、ストレートに相手に届くんだな、」と。そんな風に感じられた。

人間、いくつになっても体験から学ぶ事は多い。
とても悲しい出来事だったけれど…。
それでも物事というのは、悪い事ばかりではないのだなと。

そんな風に、今なら思える。





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