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馬場信春隊の進軍ルート:「三方ヶ原の戦い」を地形・地質的観点で見るpart12【合戦場の地形&地質vol.5-12】
歴史上の「合戦」を地形・地質の観点で考えるシリーズ。
「三方ヶ原(みかたがはら)の戦い」は、徳川家康が武田信玄に大敗した戦として有名です。
前回は犬居城主の道案内があった前提で、秋葉山の東を回るルートの確認をしました。
前回記事はコチラ👇
今回は天竜川沿いと気田川沿いの地質の違いと只来城までの進軍ルートを見に行きましょう。
地質の違い
天竜川流域と気田川流域の地形図を再確認しましょう。
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黄丸が上平山集落で天竜川流域。
緑丸が久保田集落、赤丸が犬居城で気田川流域です。
気田川流域の方が蛇行が多く、稲作に適した平坦地が広く分布しています。
この違いが何によって生まれるのか?
地質図を見てみましょう。
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赤線でなぞったのが赤石劣線と呼ばれる断層です。
これを境にした東西で地質の傾向が全く違うのが分かりますよね。
赤石劣線の西の地質
青、緑とも中生代前期白亜紀アルビアン期~新生代古第三紀暁新世セランディアン期(約1億1300万年~約5900万年前)の結晶片岩類です。
結晶片岩とは、ある地層が地下深くで圧力を受け、構成鉱物が変化することで形成される岩石です。
圧力を受ける過程で細長い鉱物や平板状の鉱物が一定方向に揃うため、それによって片理面(へんりめん)と呼ばれる面が発達しているのが特徴的です。
例えるなら、薄いプラスチックシートを何百枚も重ねたようなもので、風化すると片理面に沿ってペラペラと剝れやすくなります。
青、緑と色分けされているのは源岩の違いです。
青:泥質片岩・・・泥岩が変成したもの。
緑:苦鉄質片岩・・・または塩基性片岩とも呼ばれ、玄武岩質の火山岩類が変成したもの。
赤石劣線の東の地質
赤石劣線より東の地質は、中生代後期ジュラ紀チトニアン期~後期白亜紀マーストリヒチアン期(約1億5000万年~約6600万年前)の付加体です。
付加体とは、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に、海洋プレート上の堆積物が一緒に沈み込めずに、大陸プレートにくっついて形成される地質です。
色分けは時代や岩質の違いです。
黄色:砂岩泥岩互層
薄い緑色:泥岩
灰色:混在岩(泥岩を主としてチャートや砂岩等が雑多に混ざっている)
緑色:玄武岩
なお私が日本全国各地の地形・地質を見てきた経験上、付加体(特に混在岩)の分布地域は、大きく蛇行した河川が発達する傾向にあると考えています。気田川もまさにその1つです。
また付加体の分布地域の中でも、「黄色と薄い緑の地帯」と「灰色の地帯」の間に何条もの断層(黒線)が見られますが、これも今後の武田軍の行軍に関係してきます。
犬居城から只来城へ
犬居城主・天野藤秀が武田軍を案内したとすれば、犬居城で一旦軍勢を整えたと考えられます。
そしてここから武田信玄軍本隊から部隊を分け、馬場信春が5000人を率いて只来城(ただらいじょう)へ進軍します。
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赤丸のあたりが犬居城です。
ここから南西にある領家村(黄丸)を南下して峠を越え、二俣川流域に抜けて只来村(青丸)に至ることができます。
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それぞれ以下のとおりです。
赤丸:犬居城
黄丸:領家村
白丸:横川村
青丸:只来村(只来城)
領家村と横川村の間の地域に着目してください。
直線状の地形が見えませんか?
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拡大図です。
よ~く見てみましょう。
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こんな感じです。
上の図と見比べてみてください。
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やはり断層でした。
少々ズレているようですが、断層が通っていると侵食で高いピークができにくいので、峠を越えやすく街道として利用されやすいのでしょう。
今回はここまで。
お読みいただき、ありがとうございました。