深海底に降った雪がやってきた!:岩手県北東部山間・高山地域【都道府県シリーズvol.8岩手県part2】
岩手県のプロローグでは、地形的な特徴をもとに29か所に区分しました(私個人の見解です)。
今回は岩手県北東部の山間地域と高山地域をまとめて紹介します!
下図の「⑥・⑦」になります。
岩手県内のどの市町村?
⑥・⑦の区域が岩手県北東部のどの市町村にあるのか、地形図を見てみましょう。
⑦の高山地域は久慈市南西部、葛巻町南東部、岩泉町北部です。
⑥は同上に加えて野田村・普代(ふだい)村・田野畑村の西部が少し入っています。
では地形図だけにして見てみましょう。
地形区分を重ねたものも並べますので見比べてみて下さい。
全体的に山深い地域です。
標高の違いで山間地域と高山地域に区分しましたが、一連の山地ですね。
山地はだいたい北北西ー南南東の方向に連なっています。
西の谷地形や、中央よりやや東のゴツゴツした山地が目立ちます。
赤点線で図示してみました。
地質図を見てみる
では地質図を見てみましょう。
20万分の1でも地質図をまたぎましたので、南北で分けてお見せします。
山地が北北西ー南南東方向に連なっているとお話ししましたが、地質も同じ方向にのびているように見えます。
主に灰色や青、薄いオレンジ、濃い黄色などが見えます。
これらは古生代末期のペルム紀から中生代ジュラ紀(約2億9900万年前~1億4550万年前)の時代の砂岩(濃い黄色)や粘板岩(弱く変成した泥岩)(灰色)、チャート(薄いオレンジ)、石灰岩(サンゴ礁起源)(青)です。
また所々で中生代白亜紀(約1億4550万年前~6600万年前)の花崗岩類(ピンク色)が貫入しています。
チャートって?
チャートとは、二酸化ケイ素(水晶やガラスと同じ成分)を主成分とする、物凄く硬い岩石です。
本当に硬くて、ハンマーで叩くと火花が散ります。
どういう地層か?と言いますと、二酸化ケイ素でできた殻をもつプランクトンの遺骸が海底に降り積もり、固まってできたものです。
ドラえもんで、のび太が海底探検する話がありますが、ご存知でしょうか?
この時、のび太が「雪が降ってるみたい」と言ったマリンスノーが長い年月をかけて岩石になったのがチャートです。
マリンスノーは様々な海洋性生物の遺骸や非生物起源の粒子など色々混ざっており、全てがチャートになるワケではありません。
水深4000m以上の深海底では陸から流れたものは届かず、生物起源の殻が上から降り積もります。
生物起源の殻は「炭酸カルシウム」または「二酸化ケイ素」を主成分とするものの2種類あり、深海では水圧の作用で炭酸カルシウムは海水中に溶けてしまい、二酸化ケイ素しか残りません。
つまりチャートがあるなら、そこは水深4000m以上の深海底だったということになります。
なぜそんなものが??
なぜ深海でできた地層やサンゴ礁でできた地層が岩手県にあるのか?
これは以前、山口県の時にもお話ししたように、海洋プレートの動きによって、その上の堆積物が運ばれてきたのです。
これらは比重が軽いために海洋プレートと一緒に沈み込めず、大陸の端っこにくっつきました。これを地質学者たちは付加体と呼んでいます。
(※付加体についてはいずれ別記事で詳しくお話しします)
赤点線でかこった範囲が付加体です。
プレートが沈み込むときに、その上に載っている「軟らかめで軽い堆積物」が削がれてくっつくといったイメージです。
いかがでしたか?
岩手県北東部の山深い地域は深海の堆積物やサンゴ礁でできている地層でした。これらは硬い岩石なので、高い山として残ったのでしょう。
お読みいただき、ありがとうございました。
この地域の記事はコチラ👇
参考文献
吉田 尚・大沢 穠・片田正人・中井順二(1984)20 万分の 1 地質図幅「盛岡」、地質調査所.
鎌田耕太郎・秦 光男・久保和也・坂本 亨(1991)20 万分の 1 地質図幅「八戸」、地質調査所.
吉田 尚・吉井守正・片田正人・田中啓策・坂本 亨・佐藤博之(1987)陸中大野地域の地質.地
域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅),地質調査所,70 p.