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【短編小説】飛行機雲を切り取ったあの夏
「あ、飛行機雲。」
隣を歩く颯太が真っ青な空を指差し呟く。
凛はその声につられて頭上を見上げた。
太陽の日差しが目に入り、一瞬視界が真っ白に見える。
「まぶしっ」
UVカットのサングラスをしていても、その力強い光が凛の目を容赦なく照らしつける。
やっと視界に青色が戻ってくると、颯太が手を上げて何かしている姿が視界の隅に映った。
「何してるの?」
颯太の白いTシャツが太陽の光を反射していて、凛は目を細めながら颯太の指先に視線を移す。
両手の人差し指と親指で四角い枠を作り、カメラマンが写真を撮る時のようなポーズをしていた。
「凛、飛行機雲を数えたことある?」
「え?飛行機雲を?」
「うん。こうやって。」
そう言いながら、四角い枠を顔に近づけたり遠ざけたりしてみせた。
「数えたことないよ。どうして数えるの?」
「願いが叶うんだって。」
「願い?」
「うん。こうやって飛行機雲を切り取るんだ。切り取ったら数を数える。」
「いくつ数えるの?」
「“100”まで。」
「“100”も!?」
「そう。“100”数えられたら、願い事が1つ、叶うんだってさ。」
「へー初めて聞いた。」
「ほら、凛も一緒にやろう。」
凛は颯太の真似をして、飛行機雲を切り取った。
目はさっきよりも空の青さに慣れて、白く細い線が綺麗に切り取れる。
「今“1”ね。一緒にいるときに飛行機雲を見つけて、“100”まで数えよう。そしたら2人とも願いが叶うから。」
そう言って颯太は空に向けていた枠を凛の顔の方に向けた。
「いいね。“100”まで数えて、その時は一緒に願い事を叶えようね。」
「うん。いくつ数えたか、凛が覚えといてね。
「えー忘れそう。」
「頼んだよ、凛。」
「ちなみに颯太は、願い事何にした?」
「んーナイショ。」
口元に人差し指を当てる颯太。
「凛は?」
「んー…。私も、ナイショ。」
颯太の真似をして、人差し指を口元に当てて見せた。
凛が上を見上げると、真っ青なキャンバスに白い線がくっきりと描かれていた。
両手を上げて、枠を作る。
「…1」
あの時は結局、いくつまで数えたんだっけ。
颯太は、何を願ったんだろう。
「何やってるの?」
「今ね、飛行機雲を数えてたの。こうやって飛行機雲を“100”まで数えたら、願い事が叶うんだって。」
同じ空を見ていたら、颯太も誰かの隣で飛行機雲を数えてるのかな。
それとも、もうとっくに100まで数えて願い事を叶えたのかな。
「へー初めて聞いた。凛は“100”まで数えたことあるの?」
「ううん、途中でいくつまで数えたか忘れちゃってさ。」
「よし、じゃあ一緒に最後まで数えようよ。僕が覚えておくから。」
『今回は、“100”まで一緒に数えれますように』
凛は空を見上げたまま、そう心の中で願った。