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【読書レビュー】「黄色い家」
1.ざっくり概要
2023年に出版された小説で、著者は川上未映子さん。2024年の本屋大賞に選ばれた。
あらすじ
ホステスをする母と2人で東村山の古いアパートに暮らす高校生の花は、不安定な生活から抜け出すため、アルバイトに精を出していた。ところが、夏休みも放課後もせっせと働いて貯めたお金がある日母の彼氏に取られてしまったことに気づく。そこから無気力な日々が続き、ある日起きたらうちに母の友達の黄美子さんがいて、次第に打ち解けていく。その後、家出同然で黄美子さんと共同生活が始まり、黄美子さんが開いた「れもん」という名前のスナックで働くことになる。同年代の仲間も増え、新たに家も借りて4人でしばらく楽しく生活していたが、れもんが燃えてしまい、生活の糧を失った少女達は違法カードによるATMの出し子のシノギに手を染めてしまう…
2.感想
サスペンスではないものの、怖いものみたさにページが進む。生まれてからずっとお金に苦労してきた花の執念や、金運が良くなるために黄色にかける信念、人に利用されやすい母に対する複雑な思い、黄美子さんを慕っていたが、次第に不審に思ったり守らなければいけないと思ったりする心の機微や10代独特のエネルギーなどがストレートに伝わってきた。後半、取り憑かれたように蘭や桃子を支配しようとする花の病的な振る舞いの描写が怖いほどだった。
展開がなかなか読めず、どうなっていくんだろうと思いながら読んだ。思いの外劇的な怖いことは起こらなかった。
その後あの家はどうなったのか、書いていないことが気になった。
3.終わりに
今まで読んだいくつかの川上さんの作品は引っかかる読後感のものが多い印象だった。今回の作品も独特の印象を残しているけど、性にそこまで焦点が置かれていないのが個人的には読みやすかった。
川上さんはホステスをしていた時代があったそうで、そこで見てきた人間模様も活かされてそう。夏の場面が多いので今読むとより臨場感がありそう。