読書レビュー「息が詰まるようなこの場所で」
1.ざっくり概要
湾岸のタワマンで暮らす2組の親子を中心に、4人の立場から中学受験に向けて奮闘する様子や生活への違和感を描く小説。作者は外山薫さん。会社員の傍ら、小説を書いたそう。
2.中学受験やタワマンにまつわる世相や違和感を絶妙に描く
都内で働きながら、塾通いしてる小学生の子供を持つ親の立場で読んでも、この立場だったらこういう感情抱きそうかも、こういう人いそうだな…と思える描写が多かった。
東京でタワマン生活を誓った親友が千葉の郊外で子育てしている姿と、仕事に追われながら過酷な受験競争を強いる自身を比べて、幸せとはなんだろうと考えてしまう平田さやか。学歴で苦労しながらも加熱する受験勉強に違和感を感じ、仕事ではパワハラと指導の境目に悩みつつ、部下の突然の転職の後始末に追われる平田健太。
代々続く開業医の家系で生まれた時から進路が決まっていて、自由で賢い弟を羨みながらも結婚相手だけは自分で選んだ高杉徹。田舎で噂が広まる息苦しさから脱して、東京で開業医と結婚することで「上」にいる生活を手に入れながらも、息子が小学校受験に失敗したトラウマを抱え、義母からのプレッシャーを感じる高杉綾子。
それぞれの視点で自身の生い立ちと子供達への期待を描く。
3.終わりに
脇役達の言動も今の多くの社会人の抱える悩みを描写していて、リアリティのある小説だった。
タイトルは少しネガティブなものの、ラストは希望を感じる読後感を持った。とはいえヒエラルキーを日常的に意識せざるを得ないタワマンには住みたくないかな…