香りのチカラは無限大~『香りが脳を支配する』を読んで
皆さんは「香り」と聞くとどんな印象を持つだろうか?私自身はずっと香りには興味はあり、友人の影響でアロマテラピーなどもかじったりはしていたのだが、自分の中では依然「生活を快適にするもの」「疲れを癒すもの」止まりの知識であった。「香り」が「脳を支配する」とはなかなか思い切ったタイトル。本書では「嗅覚は5感の中で唯一本能に直結している」という特性を利用することで、香りは「私たちの夢まで叶えてくれる、協力なツール」という斬新な切り口で紹介している。
願いが叶わないのは「金メッキポジティブ」のせい?
本書によると、私たちの1日の思考約6万回のうち、約4万回はネガティブな思考になりがちだと言われている。つまり放っておくと、思考の大半は「ネガティブ」寄りになってしまうのだ。では、なぜそうなってしまうのか?本書では「顕在意識」と「潜在意識」の関係を使って説明している。
人間の意識の95~97%が潜在意識(自分では意識できない無意識の状態)だという。何か行動をする時に、過去の嫌な経験が引っかかって行動できないことがある。表面の意識(顕在意識)では「行動しなくては」と思うけれど、過去に失敗したことが「経験データ」として残っているため、ネガティブな感情になってしまっている。例えばダイエットを例にすると、「痩せてきれいになりたい」という顕在意識での願望があったとしても、「経験データ」として「以前も続かなかった」「リバウンドしてしまった」などの苦い経験が残っていると、それが潜在意識を占めていることになる。「頭ではわかっていても、そうもいかないんだよね」という皆さんもよく経験のあるあの感覚(アクセルとブレーキを両方踏んでいる感覚)、これこそが顕在意識と潜在意識のズレから来ているという。
本書ではこのように、顕在意識ではポジティブに思考(「ダイエットしたい」)しているけれど、潜在意識はネガティブな状態でブレーキがかかっている状況(「またダメかも」「リバウンドしてしまうかも」)を「金メッキポジティブ」と表現している。一方で、顕在意識も潜在意識も同じ状態でブレーキがかかっていない状態のことを「純金ポジティブ」と呼んでいる。
両者の見分け方は「頭でわかっていることがすぐ行動できているかどうか?」を見ればすぐわかるそうだ。これをなくすためには、潜在意識を上書きしてあげることが必要だという。
未来記憶をインストール
さて、ここで香りの出番だ。上述のように、「金メッキポジティブ」を「純金ポジティブ」に変えることで私たちの願いを各段に叶えやすくしてくれる。実は5感(「見る」「聞く」「触る」「食べる」「嗅ぐ」)の中で嗅覚だけが本能に直結する、という特性があるという。そのため、香りは5感の中でも唯一にダイレクトに偏桃体に作用する。この本能に直接働きかける特性を利用すること、が「潜在意識のズレ」を調整する大きなカギになる。
人は嫌な気分になっている時、偏桃体は不快のシグナルを出しているが、良い香りはそれをたった0.2秒で偏桃体を快に塗り替えてくれる力があるという。そして偏桃体のすぐ隣には「海馬」(記憶の中枢)がある。私たちがある香り(匂い)を嗅ぐと、何年前でも当時の記憶がよみがえるということがよくあるが、これはその時の出来事が香り(匂い)と共に海馬に刻まれて記憶に残りやすくなっているからだという。特に心地の良いもの、好きなものは記憶に残りやすいという特性がある。
そして、「香り」の力は人を良い気分にさせてくれるだけではなく、「なりたい自分」を潜在意識に刻み込むのを強化してくれる。海馬は良い香りと一緒に体験すると長期記憶に入っていくという。一瞬にして偏桃体を快にしてくれるという香りの特性を利用すると、顕在意識と潜在意識のずれがなくなり、純金ポジティブ状態になり、自然体でワクワクしながら行動できるようになるという。
あなたの夢を最速で叶えるパートナー
香りを使った、実際の潜在意識の書き換え方、や各香りの効能については本書に詳しく解説されているので、興味を持った方は参照して欲しい(香りはあなたが嗅いで「心地よい」と思うインスピレーションを大事にしても良いそうだ)。普段「アファメーション(宣言)」をしているという人も、是非その際に香りの特性を利用して、味方につけてみて欲しい。私は、というと、今まで色々なことを継続するのがなかなか難しい方であったが、本書で読んだ「顕在意識と潜在意識のズレ」が起因しているらしい、ということがわかったのは大きな発見であった。香りの特性と好きな香りを使って、それを軽やかに上書きしていけたらワクワクするな、と思っている!
本書では上記以外に、香りを使った潜在意識をする際に必要となる「自愛力(ありのままの自分を受け入れ愛する力)」「真我(他と自分を分け隔てるものが一切ない、ワンネスの状態)」についても書かれており、これらは夢を叶えるための大切な考え方にもなっている。アドラー心理学にも「自己受容」という考え方が出てきたが、そこともつながる。そのモードになった時に自分の周囲から、「敵」が一切いなくなり、夢が叶うのも各段に早くなるという。
ちなみに、私の最近のお気に入りは「ローズマリー」。本書によると、象徴キーワードは「今ここ、自分軸、守護」だそうだ。記憶力を高めたり勉強や仕事に集中したい時、邪気を払いたい時に有効とあるが、今週風邪で寝込んでいた期間、毎日枕元で嗅ぎたい香りでもあった。まさに私の「本能」が欲していた香りだったのかもしれない。著者の森江帆乃香さんによると、その時の体調、心の状態により、惹かれる香りが変わってくるという。その時惹かれる香りにあなたの今の状態が表れる、ということなので、状況が叶うなら、「香り」からのアプローチも面白いのではないかと思う。
「香りが脳を支配する: オートマティックに夢が叶う『潜在意識アロマ』の使い方」