編曲後記〜交響曲第3番(スコットランド)〜

今年のマンドリンオケの編曲作業が先日ついに終わりました。
編曲の経過を書いた記事(下記)を5月くらいに出していて、この時が進捗的には半分くらいだったのですが、そこからだいぶかかってしまいました。

改めてですが、今年の編曲のお題目は
交響曲第3番(スコットランド) 第1、4楽章
をマンドリンオケ用に編曲するというものです。管はフルートとクラリネット4本ずつ入れました。
今回の編曲はかなり難易度も高く大変でしたが、その分編曲に込めた思いもあるので、忘れないうちに振り返りたいなと思います。

良く鳴る編曲にしたい

今回の編曲では「良く鳴る編曲にしたい」ということを強く意識しました。

ローカル用語な気がしますが、鳴る編曲と鳴らない編曲ってあるのです。
鳴らない編曲とはどういうものかというと、
音の積み重ねのバランスが悪くなってしまって、主旋律が埋もれてしまう、とか
その楽器に不得意な音型を割り当ててしまって、思うように音が出ない、とか

で、今回この曲をちゃんと聞いた時
「鳴らなそ〜」と思ってしまったのです。
単純にいうと、マンドリンオケに合わないのでは?ってことですね。
なのである意味挑戦的な感じで、「良く鳴る編曲にしたい」と強く意識して編曲に臨みました。

ピアノ連弾に出会って曲の見え方が変わった

編曲頑張ろうと意気込んだものの、やはり壁に当たりました。
普通に編曲するとどうしても原曲の劣化になってしまう。鳴らないものは鳴らないのです。
そんな時に見つけたのが、ピアノ連弾の演奏。メンデルスゾーン本人が編曲したものです。この演奏に出会った時に曲の印象がガラッと変わり、編曲の道筋が見えた気がしました。

原曲のような派手さはないものの、ピアノ連弾の良さが随所に見られてとてもいい編曲だなと思ったのでした。原曲もいいけど、こっちもまた違っていいじゃん!みたいな感じですね。
ピアノ連弾の演奏を聞くことで、原曲を再現するのではなく、その編成にしか出せない曲の新たな一面を探ってみようと思い直すことができました。

曲の雰囲気をどうやって作るか

編曲する際にまず意識したのは、この曲のもつ独特な雰囲気。
特に1楽章のねっとり陰鬱な感じをどうするか考えていました。
その時にも考えの助けになったのはピアノ連弾。ピアノ連弾は陰鬱というよりはなんだか、しっとり寂しい感じの雰囲気でした。別にこれでも良いのだなと。

原曲:ねっとり陰鬱
ピアノ:しっとり寂しい
マンドリン:??

マンドリンだったら、、、淡く不安げ、みたいなのがハマるかな?

例えば冒頭の主題。原曲は、
オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、ヴィオラ
という楽器の組み合わせで、なんとも言えない不気味な感じなのですが、
今回の編曲では
ギター、マンドリン、マンドラ、マンドロンチェロ
の組み合わせにしました。

熟考を繰り返してこの組み合わせ(楽器だけではなく音程の配置なども)に辿り着きましたが、これが正解かはわかりません。
だけど、これが一番マンドリンオケっぽく、、淡く不安げかなと思ったのです。

弦と木管の対比

メンデルスゾーンは、木管楽器を非常に重用していたのではないかと思っています。スコットランドでも木管が活躍するところが随所にみられます。

例えば、クラリネットが吹いている1楽章の第2主題。とてもクラリネットが映える主題だと思います。曲の中で多用しているところを見ると作曲者の木管楽器への愛を感じます。

マンドリンオーケストラは通常のオーケストラと比べて、弦楽器のパワーが弱いので、良くも悪くも木管楽器が浮き出る編成だと思います。
弦と木管の対比(バランス)を意識することで、よりこの曲の良い部分が見えてくるのではないかと思いました。

原曲では埋もれてしまう動きが見えるようになる

個人的な感想ですが、原曲はバイオリンと金管が出過ぎて他の音が全く聴こえない部分があります。(そういう大味な演奏が多いのかもしれません)
これもピアノの演奏を聞いて思ったのですが、中低音の動きがゾクゾクっとする美味しい部分が多くて、これは是非目立たせたい、鳴らしたいなと。

前述の通り、マンドリンオーケストラはお世辞にも迫力がある編成とは言えないのですが、これはいろんな音が台頭に聞こえるという強みにもなる(はず)

例えば、4楽章のコーダ。1楽章のテーマが長調で再現されて盛大なフィナーレを結ぶところですが、ここの中低音の動きが素晴らしいと思います。
特に低音はギターも総動員して大分厚めに。いろんな音が凝縮して鳴っている空間になれば良いなと思っています。

おわりに

今回は、一番苦労した編曲だった気がします。
いつもは「この曲ならマンドリンでいける!」という確信を持って編曲に臨むことが多いのですが、今回は先が見えない中での編曲だったので方向性を決めるのに時間がかかりました。結果としては満足いく出来になったかと思います。

最後に、今回の編曲で大事だと思ったことをまとめておきます。

・「曲の違う一面を引き出したい」という目線を持ち続けること。
・そのために、原曲の良さをしっかり研究すること。
・いろんな演奏・編曲を見て聞いて、引き出しを増やすこと。

本番は
2023年10月28日(土)
14:00 開演 北とぴあ さくらホール(大ホール)
にて。お楽しみに!

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