マガジンのカバー画像

超短編小説

8
超短編小説を集めました。
運営しているクリエイター

#小説

【超短編小説】「ジャスミンの抱擁」

【超短編小説】「ジャスミンの抱擁」

 互いの口から洩れ出る、ジャスミンティーの優美な香り。旅先のホテルで感じた、あなたの温もり。友だちのままでいるための抱擁は、ふわりと軽い、眠気をさそう。
 あの時、終わりにするはずだった。はずなのに、今また、ジャスミンティーを飲みながら、あなたのことを想ってる。

【超短編小説】「嬉しい、悲しい」

【超短編小説】「嬉しい、悲しい」

 さっきまで、ずんと悲しかったのに、なんだか今は、ぽかぽか心が温かい。なぜかしら? 考えてみても、わからない。心って、単純。
 覚えていられないほど、ささやかなことで、落ち込んだり、嬉しくなったり、するんだから。繊細なのか、ぼんやりしてるのか、わからない。

【超短編小説】「今日はゴミの日」

【超短編小説】「今日はゴミの日」

 ふわふわと寝ぼけ眼で外に出る。冬の朝はまだ暗い。庭の片隅に、一匹の黒猫が座っていた。縮こまってて寒そう。猫を驚かさないように、そっと近寄って、手を伸ばす。「ひやっ」と、それはつるりと冷たくて、プンと、生ごみの匂いがした。

黒いゴミ袋と猫はよく間違える……。話しかけてアッと気づいた瞬間の虚しさよ。