【読書記録#1】「働く女子の運命」ー日本の女性活躍はなぜ遅れたのかー
ふと、ジョブ型制度を調べ出して見つけて、購入しました。
本書の著者は、ジョブ型、メンバーシップ型の名付け親である濱口桂一郎さん
日本の女性はなぜ「活躍」できないのか?
その理由は、日本がメンバーシップ型の採用をしているという雇用システムに問題があり、本書ではその雇用になった歴史的背景が語られています。
本記事では、備忘として自分が印象に残った部分と、それへの感想をいくつかまとめます。
1.制度面では、欧米諸国に比べて遜色ない
日本が元々男尊女卑だから?と思いましたが、元々は欧米諸国の方が男性優位、女性排除があったようです。男女平等の法律が出来始めたのも、ほぼ各国同じ時期で少し驚き。
また、日本において男女均等法も努力義務から法的義務に強化され、育児休業法も充実しています。育児休業制度は、2021年6月ユニセフが発表した報告書によると、先進国の育休・保育政策等を評価したランキングで、日本の育児休業制度は世界で1位です。
このことから、著者は法律の条文に現れていない、女性の活躍を阻害する原因があり、それが欧米と日本における雇用システムの違いにあると述べています。
2.欧米と日本の雇用システムの違いとは
本書で著者は、欧米では「ジョブ型」社会、日本では「メンバーシップ型」社会と呼んでいて、本書における解釈を整理します。
ジョブ型社会
企業の中の労働をその種類ごとに職務(ジョブ)として切り出し、その各職務を遂行する技能のある労働者をはめ込む
採用とは基本的にすべて欠員補充
はじめからジョブのスキルに対応する賃金が払われる
職業資格が上がった等の事情がない限り、時間の経過だけで自動的に賃金が上がることはない
メンバーシップ型社会
職務の束ではなく、社員(会社のメンバー)と呼ばれる人の束と考える
企業の命令に従って遂行することを前提に、将来さまざまな職務をこなしていけそうな人を、新卒採用で「入社」させる
配属されても上司や先輩の指示に従って、仕事を覚える(日本流のオン・ザ・ジョブ・トレーニング)
勤続とともにいろんな仕事をこなせるようになるので、それに応じて年功的に賃金も上がる
ジョブ型の欧米では、どうやって女性進出が進んだか
ジョブ型社会では、採用にジョブやスキルに社会的基準や根拠があるので、自然と女性が活躍していったということです。
一方で、日本ではこのようなジョブやスキルの基準で判断ではなく、新卒採用から定年退職までの長期間に渡り、企業が求めるさまざまな仕事をときには無理をしながらもこなしてくれるだけの人材であるかどうかという人格的判断が好まれる。これにより、日本型雇用システムで得をしているのは、スキルなどなくてもすいすいと企業が採用してくれる若者たち、損をしているのは、十分なスキルや経験があっても採用されにくい中高年であると。
3.さいごに
これまで、日本はジョブ型に早く舵を切ればよいのでは?と単純に思っていたのが、それには段階があり完全に切り替えるのはまだ早すぎると理解。それはかなり危険思想であった。それはプロフェッショナルの人たちの世界に素人たちを突っ込んで、ずっと選ばれないと言う悲惨な状況にもなりかねないので環境の整備から必要。
(余談ですが、ジョブ型をドラクエ、メンバーシップ型をFF5で例える話も聞いて腑に落ちました。その例でいうならば、ドラクエでいうルイーダの酒場にいる百戦錬磨のナイトや黒魔道士の市場に、FF5で言うすっぴんジョブの登場人物たちを突っ込むみたいなものです。)
根本的には、日本の教育制度まで変えるべきだと思うのですが、それはかなり時間がかかり諸々経済的な影響もありそうなので、まず直近で今働いている人たちがこれまでのスキルや経験を可視化し、自分がこれならいけるという例えば個性を発揮できる領域を考えて、そしてそれに向かって日々実行していき、ムーブメントを起こしていくことかと。
一方、企業側においては昇進や異動についても、ジョブ型採用と同様にスキルや経験を職業資格で見てもっとも相応しい人を充てるような制度も具備していく必要があるかと。
本の終わり、日本はまだ濃い霧の中にある、と締め括られていたように、日本でジョブ型社会というのは段階がありすぐには難しい。真のジョブ型社会で仕事したい、評価されたいと思うのであれば、外資企業にそりゃ行くよなと。