自由主義時代の子どもたち 2巻 レビュー
二巻発売おめでとうございます
友人の鈴木佐藤さんの現代の女性をテーマにしたオムニバス作品の電子単行本「自由主義時代の子どもたち」の2巻が発売になりました。
自由主義時代の子どもたち 2巻
1巻はこちら 自由主義時代の子どもたち 1巻
(アマゾンリンクの本の写真が出るやつやりかたがわからないごめん)
先に書いておくと、私は普段、あまり人の漫画作品の感想(とくに知人)を書かないようにしています。
というのも、私は作品の感想がえげつなく下手なため、作者に読まれて不快な思いをさせたらどうしよう…というのが最大の理由です。
ですので、今回は何かおかしい部分があってもご容赦ください。特に鈴木佐藤さんのファンの方…怒らないでくださいね。
鈴木さんとわたし
そもそも、鈴木さんとわたし(温泉川ワブ)は10年来くらいのつきあいでしょうか。
最初に鈴木さんの描いたまんがを読んだ時「うわ〜漫画ウマ!」と思ったことを覚えています。(すでに感想が下手だ…)
本人に「漫画うますぎて嫉妬するよ」と言ったこともあるくらい上手です。鈴木さんが覚えてるかはわかりませんけどね。
自分の初単行本と、鈴木さんの自由主義の1巻の発売時期がかぶったのもうれしかったなぁ。
お互いに社会人を経て、それまで趣味で描いていた漫画ですが、同じくらいの時期に「プロになりたいね」という熱い話をしたことも忘れられません。
まぁ、その時に新宿の屋外で話していて、長渕剛のチケットとアイスショーのチケットがはさまっていた私のお財布がスられたからなんですけど…。
それだけ近しい間柄であるということ、後書きにも描いていただいていましたが、今回の制作途中の作品も見ている身としては、客観的なレビューはなかなか難しいかもしれませんが、一度全部の記憶を飛ばし、普段より少し距離をとって、この作品の全体的なことや2巻の感想を書きたいと思います。
短編漫画を大量に描くということ
漫画を描いたことのある人はわかると思いますが、短編作品はむずかしいのです。(同じように長編も難しいですが)
短いページ数で、キャラクターのことを紹介し、共感ないし憧れをもってもらうのは至難の技といえます。
婚活パーティの5分のトークタイムだけでは、相手のことを理解するのは難しいのと同じです。(私はいやな思い出しかありません)
この作品のすごいところは、2巻に至るまでの8話分(それぞれの巻末のまりあさんというキャラクターの話は少しだけつながっていますが)、主人公の違う短編のオムニバス形式だということ。
オムニバス形式なのに、きちんとそれぞれに共感できるポイントが各話ちりばめられているのが鈴木さんのなせる技です。
これは、一見すると現代の女性を描くというテーマ設定によるところが大きいように見えるかもしれません。
しかし、私としては、この共感は、短いページ数の中で、キャラクターの繊細な感情を丁寧に描こうとする作家の姿勢から生まれるものであって、どのようなテーマの場合でも、鈴木さんは共感を描ける人だとも思っています。
ただし、これは読む側の印象として、現代の女性に限定された作品群を提示されるということが、大変によかったなと感じています。
読んだ人により、印象に微妙な差異が生まれるのがオムニバス作品集の良いところですが、こと女性が読者の場合、違う形の繊細なレースがたくさん重なって、ひとつの漠然としたフォルムを生み出しているようにも見えてくるようではないでしょうか。
その重ね方は人それぞれの経験や人生によって変わってくるもので、感想を書くといいつつ、この作品は特に人それぞれの感想があると思いますから、私のレビューで少しでも興味を持ってくださった方はぜひご自分で確かめて読んでみてくださいね。
さて、前置きが長くなりました。
以下、2巻のそれぞれの話のレビューを、できるだけネタバレなしで。
5話 運命の人
人を好きになったことがないボーイッシュな女性のルミは、女性らしい見た目のかわいい女性栞とルームシェアをしていますが…?という話。
異性間の友情の有無が話題になることはよくありますが、多様なジェンダーが定義されるようになった現代で、同性間でも異なるジェンダー間での関係性というのを描いてある、端的にいうと「萌える作品」です。(端的だな…)
が、単純な恋愛の話というわけでもなく(と自分は思っている)、カテゴリー分けをするというのもヤボな気もします。
これを関係性の話と読むか、個人の話と読むか、人それぞれかもしれません。それぞれ、読んだ人が自分の中でこの話の定義を決めたらいいのかな、と思います。
内容としては全然違いますが、木原敏江先生の摩利と新吾(文庫で8巻もある)とかが好きな人にはオススメです。こちらは男性同士の話ですが。
これも、お互いの気持ちの種類の違いで主人公たちが思い悩むという話ですが、それこそ、本来ならばこれだけの長編で描くようなテーマなので、短編としてまとめてすごいな、という単純な感想に帰結してしまいますね。
6話 生きてるって感じ
早苗ちゃんという会社員の女の子が、何も楽しくないな…と思っていたところに趣味を見つけて元気になる話。
日常のくさくさした気分も、趣味ができるとぱっと明るくなりますね。
形としては、昨今よくあるオタク物(主人公が趣味につっぱしる系)の形なのかもしれませんが、先述した、作家の繊細な感情表現でそうはなりません。いわゆる「クソデカ感情」という端的な言葉で片付けられがちな趣味への傾倒する感情ですが、鈴木さんはオタクなのに(失礼な)、そこは丁寧に日常を生きる現代の女性の生活を描いていて、生活から感情へ、逆に感情から生活への還元がやさしく描かれています。
また、主人公と主人公の会社の人が絶妙に「友達にいるなぁ」(あるいは自分)というタイプの人なので、こういう上司、あるいは街にいる人、いやだよね〜。という気持ちで読むのも一興。
(念のため書きますが、私はクソデカ感情ものも大好きです)
7話 あたりまえなことが
鏑木さんという頑張り屋の社会人女性。部署移動(栄転)をした直後に社会では新型のウイルス感染症が流行り出して、新部署でテレワークをすることになるが…という話。
新型コロナウイルスで、このような業務形態になった会社も少ないないと思うので、それこそ社会人の女性に読んでほしい1作。
私は正社員だった時代(今はバイトだよ)、遠隔にいた上司と画面でやりとりする機会もあったので、コロナ以前ながらテレワークあるあるだ!と思って読みました。
ぼけっとした社会人だったので、先輩のお子さんが背後でマリオする音とか好きだったんですよねぇ笑
そして、食事は作家の性格をよく表すとはいいますが、簡単なメニューを丁寧に作る描写で精神的な時間の経過がよくわかる、こちらも丁寧な作品です。
6話の早苗さん、そして7話の鏑木さんは、会社で働いたことのある人なら、女性だけでなく男性でも、どちらかには共感できるんじゃないかなぁという二人です。
どうでもいい話ですが、7話後半に出てくるコンビニのおにぎり棚の作画について「もっと麺類の間隔が…**ならおかぁ●ん食堂ののれんとか…あと飲み物は……」とうるさくいいすぎたため、コンビニ棚ソムリエと煙たがられました。
でも、満足いく出来になったと思う。みんな、コンビニ棚みてくれ。
(私は口を出しただけで、一切描いていない)
8話 やさしさの定義
まりあさんの後輩、榎田さんは真面目で、思ったこと、納得いかない事を忖度せずに口に出してしまう。本人に悪気はなく、むしろ不器用なだけで…という話。
1巻を読まれた方には知った顔だろうというまりあさんの連作の2つめです。
榎田さんも、自分あるいは友達にいるタイプで共感ポイントがまた高めの人かなと思います。
ほんとにいい人ほど不器用だったりしますが、榎田さんはそのタイプです。
自分はまりあさんの考え方の配分のが多いかなぁとも思うのですが、人が言われててむっとして言い返してしまうこともあったり、どっちがいいのかなぁ、と考えさせられる作品です。
ともあれ、いろんな人がいるということをオムニバスでたくさん読んだあとに読むので、この作品だけを単発で読む場合と、1巻と2巻を通しで読んだ場合とでは印象が変わるのかなと思います。
金子みすゞではありませんが、「みんなちがってみんないい」ですね。
次の3巻にもまりあさんの話が載るそうですので、次も楽しみです!!
という訳で、鈴木佐藤著・自由主義時代の子どもたち 2巻の全話レビューでした。
別に本人に本文も許諾を得ずに書いているため、個人情報(?)的になんかまずいところがあったら言ってください。
ちなみに、1巻はamazonのリンクを貼りましたが、まんが王国先行配信ですので、今のところ2巻はまんが王国のサイトで購入してご覧くださいね。
自由主義時代の子どもたち 2巻
あと、全然繊細じゃない自分の作品も去年発売されていますので、気が向いたら読んでやってください。笑
兄弟でフェンシングでたたかうぞみたいなそうでないような話
さくらの騎士道(全1巻) KADOKAWA COMIC BRIDGEレーベル
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