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【三流オケへの客演指揮】ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」ほか/ピエール・ブーレーズ&モスクワ音楽院管弦楽団【悪いオーケストラなどない。悪い指揮者がいるだけだ】

名指揮者ピエール・ブーレーズが客演でモスクワ音楽院管弦楽団を指揮したCDで、指揮者の仕事というか指揮者の力量について考えました。
難しい話はしないように心がけるので、肩ひじ張らずにお読みください。

ピエール・ブーレーズについて

ピエール・ブーレーズ(1925~2016)はフランスの現代音楽作曲家で指揮者。フランス国立音響音楽研究所IRCAMを設立し、初代所長に就任したほか、指揮者としてはニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督も務める。
ストラヴィンスキーやウェーベルンをはじめ、20世紀音楽の普及に努めた。

ピエール・ブーレーズ・イン・モスクワ
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」
ピエール・ブーレーズ&モスクワ音楽院管弦楽団

曲目と演奏者

イーゴリ・ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」
アントン・ウェーベルン:6つの小品
クロード・ドビュッシー:3つの交響的スケッチ「海」
指揮:ピエール・ブーレーズ
モスクワ音楽院管弦楽団

このCDは、旧ソ連のメロディアというレーベルが発売したもので、1990年5月にモスクワを訪れたピエール・ブーレーズが、モスクワ音楽院のオーケストラを指揮した際のライヴ録音です。

モスクワ音楽院管弦楽団・・・・?
聞いたことないオケです。英語表記は Moscow Conservatory Orchestra となっているので、日本語名は直訳そのまま。来歴もメンバーも主要な録音も不明です。
察するに、モスクワ音楽院の教授や学生が組織しているオーケストラなのでしょう。早い話が学生オケ?

悪いオーケストラなどない。悪い指揮者がいるだけだ

はっきり言って三流オケと思います。
あまりよい楽器を使っていないようで音色は冴えないし、一流オケにある独特の個性といったものも感じられません。
ですが、ブーレーズが演奏を通して伝えたかったもの(解釈)は伝わってくるし、それぞれの曲の構成はすっきりとよく分かります。

これがもし、二流三流の指揮者だったらどうなっていたか?
おそらくアンサンブルは崩壊し、一本調子の退屈極まりない演奏になっていたのではないかと思います。

作曲家グスタフ・マーラー(当時の名指揮者でもありました)が「悪いオーケストラなどない。悪い指揮者がいるだけだ」と言いましたが、それは真実であることを感じます。
このオケを指揮するにあたって、オケのあまりのヘタさに、ブーレーズは相当叱咤激励をしたのではないでしょうか。欧米の一流オケに要求するような、かなり厳しい要求もしたことと思います。オケも未熟なりにブーレーズの音楽作りに必死についていったのでしょう。

コンサート終了後にブーレーズが何とコメントしたかは分かりませんが、「こんなオケを指揮するのはまっぴらゴメンだ」と思った可能性はあります。
ですが、三流オケが「よい演奏をしよう」と一流指揮者に必死に喰らいつき、まずまず聴ける演奏を実現した貴重な記録です。

カラヤン指揮 NHK交響楽団の「悲愴」

名指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンが1954年に初来日してNHK交響楽団を指揮したCDもあります。これも同じように、超一流指揮者が極東の初顔合わせのオケを振って成し遂げた貴重な記録です。
このCDについては次回に・・・・

<次回予告>
【極東の見知らぬオケへの客演指揮】チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」/ヘルベルト・フォン・カラヤン&NHK交響楽団【もっともっと低音を引き出させてやる!】

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