プロダクトマネージャーの目標の決め方
作成日:2023年1月14日
私の所属する会社では、半年に1回、個人目標を設定する。私はその度にどのように作れば良いか迷い、八方塞がりになる。(今回に至っては提出期限の1~2ヶ月後に提出するという、背徳感が残る始末。笑)
そもそも目標とは何のためにあるのか、を考えた結果、腑に落ちる判断軸に行き着けたので、未来の自分のために残しつつ、他のプロダクトマネージャーや新規事業担当者の参考になると嬉しい。
PMの個人目標が作りづらい理由
まず初めに、私は現在、大手小売事業社とその先の一般消費者に向けたSaaSプロダクトを作っている。いわゆるBtoBtoCサービス。まだ大きな利用実績はなく、お客様とこれからPoCを行おうとしているフェーズだ。
私自身は、顧客の課題ヒアリングや機能の概要設計、優先度の決定、といったところで、日々関係者との調整に奔走している。一言ではわかりづらいが、プロダクトマネージャーの責務とは、作っているプロダクトが利用者に着実に利用されるよう、”なんとかする”役割と考えている。
(ざっくりな定義だが、現在チームメンバーが少なく、役割の境界線は曖昧であるため、それでいいと思っているし、肩書も時々に合わせてプロダクトマネージャーや、プロダクトオーナー、Bizdev、ディレクターなど色々好きに使っている。)
今年で新卒4年目と、ジュニアレベルから抜け出しつつある状況だ。
前置きが長くなったが、私が目標設定で悩むのは、不確実性の高いプロジェクト状況下で定量的な目標を作ることである。
今まで、サービスが世の中で使われた実績はなく、目標評価期間の半年間で実証実験ができるかどうか、顧客との契約や見込みもいつ立つかわからない。半年内でできるだろうと思っていたことが、先方の開発リソース事情でなかなか進まなかったりもした。そんな先が確定されてない中で、どのように定量的に目標設定をすれば良いのか。
例えば、定量的な指標として、『売上/利益』や利用状況を示す『MAU』, 『滞在時間』などが挙げられる一方で、今の私たちの状況においては、半期で売上を立てることや利用者数を爆増させることは非現実的といってもいい。これでは目標は、絵に描いた餅になる。
また、新規事業領域において、個人で影響を及ぼせる範囲が見極めづらいことも要因としてある。『実証実験の実施』を設定した場合、関係会社が別の社内事情でできなくなった途端、目標未達となり、個人の評価と紐付けづらい。特に、ジュニア&ミドルレベルでは、社外の関係者を大きく動かせるまで、ずっと昇格できないことになる。
一方で、コントローラブルな『機能開発数』や『顧客営業数』などを目標にすると、手段が目的化する。極端に言えば、機能さえ作れば、あるいは営業接点さえ作れば、売上に全く繋がらないとしても評価されることとなり、組織として健全ではない。
「さて他に何があるのだろうか」
定量的な目標にこだわる
改めて、そもそもなぜ『定量的な目標』を作る必要があるのだろうか。定性的な目標でもいいのではないだろうか。
と思ったとき、評価をする立場や組織全体を考えてみた。
評価者にとって、判断基準が曖昧なものだった場合、例えば「クライアントにやりたいと言わせる」とか「MVPを作っていて売れる状態になっている」とか、人によって認識がブレやすいと、最終的に評価者の感覚や、かろうじて記憶していること、最悪その日の気分だけで評価することになる。それが各部署で起きると、実態は進捗していないのに、評価のみ上がっていく体制ができあがり、「あの人はなぜ…」と組織内でハレーションが起きやすくなる。
なので、定量的な評価は、半期での行なっていたことが組織の成果にどれだけ貢献したのかを客観的にチェックするためにあり、それは正当な評価を受けるために役立つ武器なのである。
特に、昇進や昇給を狙う場合、判断する上層部や他の評価者は、現場状況をさらに知らないため、より認識がブレづらい情報が必要になる。
従って少しでも昇給したい、降格されたくないという場合は、定量目標をうまく使うことで、自分の実績を証明できる。
(といっても、先ほどの通り、利益がすぐに生めない中で、手段を目的にしないようにするのは困難を極めるのだが。。。)
プロダクトの推進状態を言語化する
以前、目標を提出した際に、上司から「個人スキルよりもプロダクトの状態に焦点を当てて書いてほしい」とフィードバックをいただいた。あれ、個人目標だけどプロダクトの目標?どっちだ?と戸惑いつつ、なぜそのようなフィードバックがあったのか、上司の視点を深ぼって考えてみた。
まず、役職ある上司の評価は、事業をどのくらい大きくしたか、あるいは利益につながる実績・根拠を集めて活動を続ける提案ができるか、によって大きく決まる。つまり「この事業への投資のリターンが見込める」「投資によってこれだけの変化があった」を、上司のさらに上司へ説明していかないと、事業が続かない可能性すらあるのである。
だからこそ、私の個人目標においても、その説明・コミットが求められると考えた。
プロダクトが成長する状態、もしくはより良い状態とは、どんな状況だろうか。利益や集客数がない中でどんな状況であれば、他の事業部や関係ない人から見たときにも成長していることを納得できるのだろうか。周りが納得するには?という観点で、言語化を模索した。
リリース前のプロダクトでの、「進捗・成長」とは下記2つの状態がある。
※プロジェクトの状況や課題によって変わるはずなので、あくまで一例としてみてもらいたい
①顧客の熱量に火をつけられているか
顧客内で、今実施しないといけないという環境を作れている = 投資さえすれば、必ず市場を取れることが見えていること。
例えば、
顧客のキーマンが社内外へ実施意向を表明している
顧客のビジネス戦略上、他の施策と比較して必要不可欠であることを理解頂いている
②顧客に選ばれる必然性を作れているか
顧客にとって、提供する技術・組織力が武器となること、さらに可能性の広がりと実現性が見える状態であること。
例:顧客に困ったときに頼ってもらえる関係値を築けているか
例:他社ではできない機能提供やサポート体制があるか
例:顧客と契約を結んでいる
例:顧客への金銭的なメリットがある
これらの観点をもとに、顧客とスケジュールを合意する件数を最終的な指標に置いた。詳細は割愛する。
良いチームとは何か
私の会社では、2つ目標を作る。事業貢献目標と、組織貢献目標だ。事業については上記に述べたとおりだが、組織については何をゴールにしようかまたこれも迷った。そこで、そもそも良い組織とはどういう状態なのかを考え直した。
参考になったのは株式会社10X 代表矢本さんのブログ記事『良いチームとは何ではないか』。この記事から、チームのあるべき姿とは、組織が『どれだけ利益を生む強い体質になっているか』であることを学び、そのベクトルでのAS-IS, TO-BEの目標を作ろうと思った。
利益を生む体質には、前提として次のような条件がある。
チームにとってのリターンの定義について、共通認識がある
リターンの伸び率を意識できる状況(チェック体制)がある
リターンについて継続的に立ち返るドキュメントや議論機会がある
個人が自律し、リーダーシップを取って上記を揃え、課題に立ち向かえる
逆に、チームづくりにおいてよく意識される、心理的安全性や勉強会づくりは、利益を生まない中で達成しても、それは企業にとっては価値の薄いものとなる。
従って、目標作成時には「利益を作る組織」の定義と、「その現状→未来の変化度合い」を指標にすることにフォーカスを当てて目標を検討した。
今回具体的には、開発ディレクションの運用コスト削減と、ドキュメント整備による情報アクセス性を高めることによって、各メンバーがリーダーシップを取る環境が作れると考えた。
指標としては、最終的には現状と未来の対応時間の差分を据え、その時間には、
属人化による時間(ひとりにタスクが留まっている時間)
手戻りが発生している時間
ドキュメントの確認・整理に費やす時間
の3要素を含めて換算した。どこまで測定時間の正確は難点だが、わかりやすい変化度合いとリターンへの繋がりを描けたと思っている。
最後に
目標の設定は、期待値レベルや求める個人の成長率によって変わる。個人的な感覚としては、実現可能性60%・希望40%くらいの割合で設定するのが良いのではないかと思っており、そのバランスをうまく取る&周囲と考え方を握るための論点整理を今回は行った。
ただ結局のところ、どんなにかっこいい目標を作っても、小手先で設定しても、「この人にはもっと対価を払いたい」と思えるほど、かっこいい人にならないと目標の意味はなさない。目標がただの張り紙にならないように、仕事に少し慣れてきた4年目でも成長率が鈍化しないよう、チャレンジし続けたい。
最後に以前尊敬する上司から頂いたコメントを添えて、行動し続けることを肝に銘じたい。
「痛みを伴って経験を積むことでしか、かっこいい人にはなれない」
「痛みを避けていちゃイタイ人になってしまうよ」
「小規模の会社の良いところは、意思決定や経験を早いうちに得られること、人と対峙して動かしていける・リードできること。それを有意に使っていこう」