MIMIGURIに研究チームを立ち上げて約1年を振り返る
この記事はMIMIGURI Advent Calendar 2023の12日目の記事です。前回は同じチームの小田さんの記事「アイデンティティは創造性の源泉だ」でした。
MIMIGURIは昨年からアドベントカレンダーにチャレンジしています。昨年のアドベントカレンダー企画で、私は「MIMIGURI研究開発本部で実現したい3つのこと」というテーマで記事を書いていました。
3つのことというのは、
1. 実践を触発する研究がしたい
2. 研究活動のための豊かな土壌をつくりたい
3. CCMを多様な研究者・実践者と深めたい
というもの。
そこで、今日は研究開発本部をたちあげて約1年(厳密には1年と3ヶ月)経った今、この約1年、特に今期の活動を振り返り、今思っていることを綴っていこうと思います。
テーマは⑤理論と実践をメインに、②葛藤も少し入っています。
MIMIGURIの研究チームは何をやっているの?
MIMIGURIは2022年2月に文科省認定の研究機関となりました。それに伴い、2022年9月に正式に「研究開発本部(堅苦しいので本記事では以降 、研究チームと呼ぶことにします)」を立ち上げました。研究チームには現在6名のメンバーが所属しており、その他に共同研究などをご一緒させていただいている研究パートナーが4名います。
研究チームの中には、組織学習・ナレッジマネジメント・新規事業マネジメントなどの専門性を軸とした「研究室」を設けています。各研究室や研究チームのメンバーが自律的に研究を進めながらも、週1回設けている「ゼミ」という場で各自が研究進捗を持ち寄って研究チーム全体でコメントをしあったり、MIMIGURIが独自に創造的な組織の状態を表す見取り図として打ちだしている「Creative Cultivation Model(以下CCM)」の理解を深める場をつくっています。
研究室・研究チームの活動は様々です。研究テーマを軸に書籍や論文を執筆していたり、日々の実践から得られた知見をまとめて学会発表したり、先行研究をレビューした内容を「 CULTIBASE 」(MIMIGURIが運営する、マネジメントとファシリテーションの理論と実践知を学ぶプラットフォーム)のコンテンツにしたり。
ちなみに私は組織学習研究室を担当しているのですが、現在は同研究室の遠又さんと、『コアテキスト 組織学習』の著者でもある安藤先生との共同研究を進めています。(その内容はまたどこかで…)
MIMIGURI研究チームの特徴
研究チームがどんな活動をしているのか、あれこれと書いてきましたが、振り返ってみると、研究チームの大きな特徴として挙げられるのは「事業との距離が近いこと」です。
「研究チームっていうと論文を書いたり、学会発表することがメインの活動なのかな?」と思われるかもしれませんが、それは活動の一部であって特段メインというわけではありません。
MIMIGURIの研究チームは「事業貢献しながら研究貢献をする」ことを一種のスローガンにしており、これまでも前述したCULTIBASEでのコンテンツ発信を行っている他、コンサルティングでの経験をもとにした研究活動も行われています。
研究による事業貢献の仕方はインタビューやサーベイ分析などいくつかありますが、MIMIGURIの研究チームが得意とする事業貢献活動が「コンテンツ開発」です。個人的に、コンテンツ開発はMIMIGURIに散らばる知や先行研究で明らかになっている知を編んでまとめるアセット構築の一環だと考えています。
研究チームはどのように事業貢献できるのか
民間企業で、各々の興味関心や専門性に基づいて研究できる、さらに事業とも近い距離で研究ができるというと「面白そう!」と思う方もいらっしゃると思いますが(そして面白いのは間違いないのですが)、もちろん悩みや葛藤、課題もあります。
特に事業との距離が近く、「事業貢献しながら研究貢献をする」ことを掲げているからこそ、「研究(チーム)は事業にどのようなインパクトを与えられるのか」という問いについて何度もチームで向き合って対話し、今もまだ考え続けています。
そんな研究チームが、事業貢献の一環としてここ半年ほど力を入れて取り組んでいたのが、CCMに基づいた、ファシリテーター育成のための講座開発です。これまでもコンテンツ開発はしてきましたが、CCMを軸に複数のコンテンツをチームで一連の学習コンテンツとして編みあげたのは初めての機会でした。
あまりに学術用語に偏り、抽象的になりすぎると眠たいコンテンツになってしまいますし、一方で具体の話に寄せすぎてしまっても汎用性が下がります。また、なるべく端的にわかりやすく伝えたいと思う一方で、細かいニュアンスを削ぎ落としすぎると先行研究で明らかになっている範囲から主張がはみ出しすぎてしまう懸念もあります。こういった微妙な調整のはざまで、あーだこーだとお互いにフィードバックをしあってひとつの形になりました。
現在は、クライアント企業さんにこの講座を提供する過程に、私も他のメンバーもいちメンバーとして関わりながら、さらにこの講座をよりよい内容にする、いわばよりよいアセットを構築していくべく励んでいるところです。
また、講座以外にも、先ほども取り上げたCULTIBASEに研究チームのメンバーも関わり、コンテンツ開発を担っています。
約1年の研究活動を振り返って
研究チームを立ち上げて約1年を振り返ってみて「MIMIGURIの研究の “らしさ”は、創業当時から掲げてきた “研究と実践の往復活動”にある」、そして「研究チームは、研究と実践の往復活動による事業価値を生み出そうとしている」と改めて感じます。
ここでいう「研究」とは、既存研究ではまだ明らかになっていない、新たな知を生み出す活動をイメージしています。一方、「実践」とは、MIMIGURIでいうコンサルティング、プロダクト開発などの事業活動や、組織活動をイメージしています。
「既存研究ではまだ明らかになっていない、新たな知を生み出す活動」とは、もう少し具体的に言うと、大文字の理論(Theory)と小文字の理論(theory)を組み合わせる活動をイメージしています。平たくいうと、大文字の理論(Theory)とは学術的な知識のことを指し、小文字の理論(theory)とは日常経験から形成される実践知のことを指します。(※1)
たとえば、開発した講座の内容を思い返してみると、講座全体的に、大文字の理論(Theory)と小文字の理論(theory)の組み合わせによって成り立っていることに気がつきます。具体的にいうと、この講座はナレッジマネジメント・組織文化・組織学習など様々な領域の先行研究をレビューし、それらをまとめる一方で(Theory)、研究チームのメンバー自身が経験した、あるいは他のメンバーも含むMIMIGURIが手がけた事例・経験をもとに図やモデルを作成し、汎用可能な知としてまとめています(theory)。
結果としてこういう講座がつくれたということは、「日々、研究と実践を往復することができていたのかもしれないな」「研究と実践を往復することが事業貢献につながっている気がするな」という肯定的な感情に繋がりました。
創業当時から大事にしてきた言葉であるならば、一見当たり前のことに思われるかもしれません。それでも、なぜ今こんなことを書いているのかと言うと、日々を目まぐるしく駆け抜けていると、本当に「研究と実践を往復する」が体現できているのか、時に不安になるためです。
コンサル活動にどっぷりつかっている際には「(研究チームなのにコンサルメンバーと同じように事業に取り組んでいるけれど)これでいいんだっけ?」と思うし、ひたすら先行研究をレビューしていても「(事業貢献を大切にしているのに学術研究ばかり見ていて)これでいいんだっけ?」という気持ちにもなります。
けれど、落ち着いて1年を振り返ってみると、「研究と実践の往復」という言葉が、具体的な経験も伴って、より一層馴染む言葉になってきているし、「研究と実践を往復」することによる事業貢献が、より実感できるようになっているなと感じました。
おわりに
もうすぐこの記事もおわりにしますが、最後に一つだけ書いておきたいことがあります。
この記事では、研究チームを立ち上げて約1年を振り返り、「研究と実践の往復をしてきた約1年だったし、研究と実践を往復することが事業貢献につながっている体感を得た」ということを書いてきました。ただし、「研究と実践の往復」はなにも研究チームだけがやっていることではありません。
MIMIGURIは創業・合併当初から、皆が探究を深め、実践知を研いでいっています。実践知は、社内で言語化されるだけでなく、CULTIBASEで発信されたり、学会発表されたりする場合もあります。こうしたことが可能になっているのは、MIMIGURIが「探究を大切にする組織文化」を持っており、全社的に研究を日々の実践から切り離さず、実践を起点とした探究活動の延長に研究を捉えているからだと感じています。
今後も「研究と実践の往復」を率先してやっていきたいとは思いますが、それは研究チームだけがやるという意味ではなく、(これからも引き続き)MIMIGURIという組織全体で、「研究と実践の往復」を体現していきたい所存です。
さて、MIMIGURIアドベントカレンダー、明日13日目は、同じ研究チームの西村くん担当の予定です!どうぞお楽しみに〜。
(※1)大文字の理論(Theory)と小文字の理論(theory)とは、リフレクション研究を行うコルトハーヘンが提案した考え。詳細は下記のnoteや書籍を参照
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