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【映画レビュー】なのに、千輝くんが甘すぎる。

さて、私はそろそろスイーツ映画評論家を名乗ろうと思う。自分の中に、定期的にスイーツ映画を見る事でしか満たされない何かを感じているし、スイーツ映画をよく見ていると自負しているからだ。そんなスイーツ映画評論家である私が、こんなに出来の良いスイーツ映画があるのかと感心したのが本作である。

平凡な女の子が、失恋の傷を癒やすために学校イチのモテ男と恋愛ごっこをするうちに本物の恋愛になっていくストーリー。めちゃくちゃスイーツ要素が詰まった王道の恋愛映画だ。なのに、そういう映画にありがちなバカみたいに短絡的なストーリーとか全くキュンとしないわざとらしいキュンポイントとかにイライラして突っ込みまくるみたいな事が全然なかった。
いや、ストーリーはいかにもスイーツって感じの短絡さだし、いかにもスイーツって感じのキュンポイントもたくさん出てくるのだ。でも、全然イラッとしない。その短絡さをコメディとして笑えるし、メインカップルの恋愛にちゃんと好感が持てる。スイーツ映画らしさを失わず、これだけ不快感のない仕上がりになっている作品があるんだと驚いた。

まず、主役の高橋恭平が少女マンガに出てくる学校イチのモテ男を演じるにふさわしいビジュアルすぎる。細すぎる体とか、髪型とか、温度感とか、とにかく色んな要素が少女マンガっぽさを感じさせる。関西Jr.時代のドラマを見た時はかなり演技が下手だなと思ったけど(他のJr.と比べても下手な方だった)、本作の演技はめちゃくちゃちゃんとしていた。走っている姿やサッカーの身のこなしも悪くない。
恭平の演じる千輝くん、よくある他の女子たちには冷たいけどヒロインの子にだけ優しいキャラなんだけど、掴めないキャラで積極的に距離を縮めていく、読めない感じが良い。こういうタイプにありがちな、冷めてるけど何でもできちゃうタイプじゃなくて、熱いところがあるのも好感を持てる。

ヒロインのキャラクターがネガティブでオタクっぽいんだけど、それが明るいコメディに昇華できているのも上手い。見ていて楽しいとか、恋を応援したくなるとか、お互いの事を好きになるのもわかるなという納得感とか、そういう大切なのになぜかスイーツ映画で疎かにされがちな要素をちゃんと備えている。
そういう明るい空気感の中だと、ストーリーの乱暴さをわりと許容できるものだ。スイーツ映画らしい乱暴なストーリーなのに、コメディの空気で笑い飛ばしたりキャラクターへの好感で応援できたりする。それに、乱暴なストーリーながらキャラクターの行動の理由付けが上手くできていて納得感がある。これが出来が良い映画だと感じさせる。
例えば『今夜、世界からこの恋が消えても』みたいに、作品のクオリティが上がるとスイーツ映画らしさが無くなるので(私はこの作品をスイーツ映画と認定していない)、スイーツ映画らしさを保ったままここまで良い映画だと思わされるのは珍しいなと思った。

たぶん、私が今まで見たスイーツ映画の中で一番クオリティが高い作品だと思う。ただ、スイーツ映画愛好家以外の映画ファンが見ても面白いかどうかは、保証はできないかもしれない。

『なのに、千輝くんが甘すぎる。』 3.0


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