【映画レビュー】いぬやしき
サイボーグになって強大な力を手に入れた2人の戦いを描く物語。漫画原作らしい派手なストーリーと派手なアクションで面白かった。
夜の公園に偶然居合わせた2人が、謎の事故に巻き込まれてサイボーグになってしまう。その事故や、2人を作り変えたのが何者なのかは全く語られない。とにかく、おじさんと高校生が機械の体になって人ならざる力を手に入れる。
無気力だった高校生(佐藤健)は友人のイジメを暴力で抑えつけ、周囲への不満を暴力で発散するようになる。一方、おじさん(木梨憲武)はケガや病気を治せる力を手に入れ、病院に通って密かに患者たちを治していくようになる。一見、彼らは全く正反対の能力を与えられたように思えるけど、実は違う。それぞれ決して恵まれているとは言えない状態なのに、彼らの社会への向き合い方が全く違った事で、それぞれの能力の使い方が違っていた。それは性格によるものもあるだろうし、若さゆえの危なさでもあったのだろう。若者が大きな力を持ってしまったら、社会への不満を暴発させるようになる気持ちは少し理解できる。そんなダークサイドに落ちてしまった高校生から、街を守るおじさんの戦いへと突入する。
これだけ大きな力を手に入れてしまったら世界規模の戦いに発展させたくなるだろうけど、あくまで高校生の私怨で破壊行為が繰り返され、世界観を広げすぎなかったのはすごく良かったと思う。結局、普通の高校生の視野はそんなもので、世界を手に入れる能力を手に入れてもいきなり世界征服を企んだりはしないというのはリアルだ。こういう現実離れした能力バトルをする中で、目の前の不満や、行きあたりばったりな恨みや、家族愛など、現実的な部分がちゃんと描かれている。やっている事はサイボーグ同士の特殊能力を駆使したバトルでも、それが現実の範囲に収まっている感じが良かった。
たくさん人員を動員したパニックシーンや、機械同士の戦いや、破壊など、映画らしい派手なシーンもたくさんあった。
犬が重要なキーになると思っていたけど、特にストーリーに絡んでこなかったのだけは意外だった。ただ、かわいいだけだった。
『いぬやしき』 2.5