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【映画レビュー】ライアー×ライアー

私はジャニオタ(社名が変わったけど)と呼ばれる部類の人間なので、売り出し中の男女にありがちな恋愛をさせる、いわゆる「スイーツ映画」と揶揄されるような映画をたまに見る。そういう類いの映画を全く見ない人たちは知らないだろうが、スイーツ映画の中にも本当にあり得ないぐらいひどい人の道を外れているようなクソスイーツ映画(星0.5)もあれば、まぁバカみたいな設定だけど面白い部分やキュンとするようなポイントもあったなっていう優良スイーツ映画(星2.0)もあるのだ。映画『ライアー×ライアー』はその中でも優良スイーツ映画と呼ぶにふさわしい出来映えだ。

まず、スイーツ映画に一番求められる主役の二人のカッコいい姿、かわいい姿がちゃんとある。制服姿とか、楽しそうなデートの様子とか、思い悩む姿とか。これが失敗スイーツ映画だと、天然を演出しようとしてただのバカになったり、嫉妬を描こうとしてただのイヤな奴になったりするのだ。そこは成功していると思う。ただ、個人的にはイケメンを描こうとして振りかぶったシュートばかり決めようとするのは、この映画に限らずだけど、いかがなものかと思う。さりげないしぐさや表情からイケメンが現れるというか、同じことをしていてもイケメンってイケメンなんだなぁと思うものなのだ。だからカッコいいかわいいと思わせようとするセリフを乱発しすぎだなと、昨今の映画やドラマには感じてしまう。

例えば、主役の松村北斗くんが、洗濯を干しているお母さんと、リビングで会話しているシーンがある。この時、村松北斗くんが、いかにもお母さんが作ったんだろうなという家の麦茶を飲んでいるのだ。クールなイケメンも家では生活感漂う麦茶を飲むんだなぁとか、イケメンは家の麦茶を飲んでいてもイケメンなんだなぁとか、こういうさりげないシーンこそキャラクターが浮き彫りになると思う。決めにいくセリフやあからさまな小物だけがカッコよさの表現ではない。

そして、この映画が他のスイーツ映画と一線を画しているのが、狂気を描いている点だ。とある人物の嫉妬からくる狂気を、静かに、でも確かに描いている。小さな違和感を覚えさせ、なんか怖い、めちゃくちゃ怖いんだけどコイツと不安にさせ、はっきりと悪意を持った狂気を表に出す。役者さんの表情も、カメラワークもめちゃくちゃ上手い。そこだけスイーツ映画の域を越えている。こういうキラリと光るシーンや技術に期せずして出会えると、スイーツ映画も捨てたもんじゃないなと思う。

ただ、全体的にはシナリオの深みや意外性に乏しく、設定の無理も散見される、やはりスイーツ映画だなという結論になってしまう映画だった。しかしそういう映画だとわかっていて頭を空っぽにして見ると、スイーツ映画も楽しいエンタメだ。

ちなみに、この映画のAmazonプライムビデオの評価は星5満点中の4.6。こういう映画はファンしか見ないので評価が高くなりがちだが、満足度の高いスイーツ映画という私の評価はおおむね正しいようだ。まぁ私は星2.0だと思うけど。機嫌が良くても2.5ぐらいが限界だと思うけど。

『ライアー×ライアー』 2.0
https://watch.amazon.co.jp/detail?gti=amzn1.dv.gti.af47b24b-3372-4c4a-a543-f3725549b586&ref_=atv_dp_share_mv&r=web

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