【映画レビュー】アニー・イン・ザ・ターミナル
少し何かが違えば、良い映画になっていただろうにという惜しい映画。残念ながら雰囲気だけはいい退屈な作品だ。
あらすじを言ってしまうと、ネタバレになってしまいそうだ。というのも、かなり終盤まで何が目的なのかわからないままストーリーが進むのだ。だからこういう映画だと説明すると、それが映画の終盤のネタバレになってしまう。一応、場末のアウトローな雰囲気の中で美人が何かをする話とでも言おうか。
とにかくめちゃくちゃわかりにくい。だから退屈に感じてしまう。
わかりにくさの原因は色々あるが、上述の通り目的が掴みにくくどこに向かっているのかよくわからない事がまず大きな原因だろう。一応序盤に、主人公の美女が裏社会の元締めみたいな奴と交渉をするシーンがある。だからうっすら、そこに向かっている事は知っている状態ではある。でも、その重要なシーンが埋もれてしまって重要な情報だとわかりにくいのだ。誰が主人公なのか、何が目的なのか、このシーンには何の意味があるのか、そういう重要な事がめちゃくちゃわかりにくい。
その上、時間軸を移動するのでさらにわかりにくくなる。この時間軸の移動も、過去にさかのぼった事がわかりにくくて、もっとわかりやすく時間の移動を気付かせて欲しい。いや、それ以前にそもそも時間軸を移動する必然性を感じない。時間軸を移動する事でどんでん返しが起こるみたいな魅力的なストーリーになる訳でもなし、情報が整理されてわかりやすくなる訳でもなし。
そして地味に、セリフがわかりにくい。これは雰囲気を出そうとしてわかりにくいセリフ回しになっているのか、日本語訳が悪くてわかりにくくなっているのか、判別がつかないところではあるが。まあとにかく、示唆に富んだカッコいいセリフを狙っているんだろうなぁという、その狙いすぎなセリフが全く響かない。
脚本の敗北なんだろうなと思う。同じストーリーで脚本をちょっといじれば、良い映画になっていた可能性は全然あると思う。そう思わせるくらい、映像は良い。主人公の美女の、なんだか裏がありそうな、でも魅力的な雰囲気とか。駅とかダイナーとかホテルとか、ロケーションもそれぞれ雰囲気がある。場末っぽいけどちょっと近未来感も感じる(たぶん人が少ないせいだと思う。低予算なのだろう)独特な空気感は珍しくて良い。いかにも面白い映画みたいな雰囲気だけはあるのだ。
でも面白くない。いざ事が起こっても、あぁそういう事だったんだと思うだけで全くハラハラドキドキしない。カタルシスがない。いきなり雰囲気が変わって、悪い意味で驚く。わかりにくい事ばかりなのに、そのくせ黒幕だけはわかりやすい。だって、あまりに王道すぎるんだもの……。
改めて、脚本の重要さを感じられる映画だった。
『アニー・イン・ザ・ターミナル』 2.5