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【映画レビュー】レッド・ロケット

ゲラゲラ笑える映画が見たい気分だったのに、思っていたものと違ったせいだろうか?やけに評価が高いようだが全然ハマらなかった。

有名なポルノスターだった男が、落ちぶれて困窮して地元に戻り、元妻(みたいな位置付けだけど籍はまだあるらしい)の家に転がり込んで再起をはかる物語。すごく面白そうなコメディ映画っぽいあらすじだけど、現実ばかり突きつけられてクスリともできなかった。

この物語ではどうやら主人公の元ポルノスターが「クズだけど憎めない奴」として描かれているらしいのだが、個人的にはそういう好感を全く持てず、本当に終始嫌などうしょうもない憎むべき奴だった。私は決して潔癖ではなく、むしろそういうキャラクターをゲラゲラ笑って楽しむタイプなのだけど……。
全くカネがなく何も持っていない彼は、とにかく色んな人に助けを求めるのだけど、彼がベラベラとしゃべって拝み倒して自分の言うことをきかせる様子に全く好感が持てない。わがままで、口先だけで、モラルがなく、面白くない。あのバイタリティは見習うべき部分だと思うが、身勝手で他人を不幸にしてばかりで、ああはなりたくないと思ってしまう。
これが、関わった人たちに、最初は迷惑を掛けるが最終的にはそれの何倍もの幸福を残すようなタイプだったら、彼を憎めない奴だと思えただろう。彼に関わらずそのままの暮らしを続けていた方が良かったのにと思う事ばかりだった。もともとの生活だって、テキサスの田舎の決して幸福とは言い難いものだったけど、その方がマシだと感じるような事ばかりだった。
しかも最初は良い顔をして近付くのに、だんだんワガママになっていって、いざという時に助けてもくれない、本当に身勝手な奴だ。

劇中でたまに、トランプの看板や演説の様子が出てくるのだけど、きっとそれは重要な示唆なのだろう。南部の田舎の普通に暮らしていても希望が持てない、この映画で描かれているような街の人々が、トランプに希望を見出すしかないのだというような。それがどこに繋がるのかもよくわからなかった。まさか主人公にトランプのような希望を重ねているとも思えないし。

こういう人間がいるのもわかる。こういう人間も必要だとも思う。でも、そういう人間をエンタメとして楽しめるように昇華した映画とは思えなかった。
憎めない奴として楽しんだ人たちがすごく評価しているようなので、私は少数派なのだろうが。

『レッド・ロケット』 2.5

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