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【映画レビュー】アメリカン・ハッスル

実話を基にした詐欺師の話と言われ期待する騙し合い要素は少なめだけど、人間関係がごちゃごちゃしていてこれはこれで面白い。派手で楽しいエンターテインメントだと思う。

詐欺師の男女がFBIに捜査協力し、犯罪者や政治家の汚職を暴く物語。正直、事件そのものについての描写はやや不足気味で、実話を基にした映画にありがちな、アメリカでは有名な事件なので知っているものとして描かれているようなところがあるのかもしれない。カジノを作る時にありがちな汚職みたいな、本国の人間にとっては当たり前の事も含まれる可能性もある。ただまあ、不足気味ではあるけどわかりにくいとか意味がわからないとかはない。普通にストーリーは追える範囲だ。

この映画、捜査のために身分を偽っているのがバレるかどうかハラハラするとか、知能犯同士の騙し合いの応酬とか、そういうものは少ない。含まれているし、上手く描かれてはいるけど少ない。ただ、その代わりごちゃごちゃした人間関係が多く描かれていて、それが結構面白い。でも、恋愛とか功名心とか家族愛とか興味ないから騙し合いを見たいというタイプには不向きかもしれない。
詐欺師の男とFBIの捜査官の間で揺れる詐欺師の女は、何が嘘で何が本当なのかわからなくていかにも詐欺師の恋愛って感じで面白い。味方はウザいけど捕まえようとしているターゲットはあまりに良い奴で、詐欺師のくせに心を痛める主人公の気持ちにめちゃくちゃ共感できる。かわいそうな扱いのFBIの上司に同情したりできる。そういうくだらない人間関係のごちゃごちゃを楽しめるのが、ただの詐欺師の映画とはちょっと変わっていて好きだ。

それにキャストがめちゃくちゃ良い。最初に「えっ、この太った人クリスチャン・ベールだったの?!」と衝撃を受けるけど、その違和感をいつの間にか忘れていたほどに馴染む。詐欺師の女はエロくて良いし、ブラッドリー・クーパー演じるFBIの捜査官のウザくて鼻につく感じが一瞬で理解できるのもすごい。他にも見た事ある顔がたくさんあるし、めちゃくちゃ良いところでこの人来たか!みたいな盛り上がりもある。

詐欺師の映画っぽくない部分もあるけど、詐欺師の映画らしい派手なところもあって、豪華キャストで、ハリウッド映画を見たという満足感の高い作品だった。最終的には、色んなものが上手く収まったという納得感もあった。

『アメリカン・ハッスル』 3.5

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