【映画レビュー】最初で最後のキス
序盤は平凡なB級映画みたいな雰囲気なのに、途中でぐっと引き込まれ、終わってみると号泣していた映画。だから10分で諦めずに、どうか30分我慢して見て欲しい。
この映画は悲劇に向かう事を、最初から登場人物の独白で知らされている物語である。ただ、ずっと暗くて悲しい話ではなく、青春時代らしい楽しい事もたくさん起こる。
タイトルからは恋愛映画を想像させるけど、この映画は友情を描いた映画だ(ただ、このタイトルは秀逸だと思う)。学校イチのビッチと噂の女の子ブルーと、派手な格好のゲイの転校生ロレンツォ。学校のはみ出し者の2人が意気投合し仲良くなってから、この映画は一気に面白くなる。2人が、バスケ部のエースながら無口で他人と関わろうとしない事で同じく仲間外れになっているアントニオを仲間に引き入れ、3人で友情を深めていく様子が本当に良い。楽しくて刺激的で青春って感じで、羨ましいくらいの友情関係だ。
ただ、相変わらず学校では浮いていて、だから他の生徒たちとの対立をどんどん深めていくし、学校以外にもそれぞれ問題を抱えていて、彼らの生活の全てが楽しい訳じゃない。でも、そういう嫌な事がたくさんあるからこそ、3人でいる時間がどんどん輝いていく。
そういうキラキラした特別な友情関係があまりに幸せだからこそ、結末が悲しい。あんなに楽しかったのにどうして……と思ってしまう。
若くて未熟なエネルギーが少し間違えると大きな悲劇になってしまう、そういうほんの少しの掛け違いを強く感じさせる作りも上手い。
『最初で最後のキス』 4.0